フェンダーが欲しいけど
●どのモデルが自分に合うか?
●モデルがあり過ぎて、どこから検討すれば良いかわからない
という方のために、現役楽器屋店員のyosh(@yoshguitarblog)が、スタイルや生産国の違いと、2022年時点でフェンダーで展開されているシリーズ一覧を紹介します。
3つのスペックスタイル
フェンダーではシリーズが数多く展開されていますが、現在のフェンダーのギター・ベースは主に3つのタイプに分類されます。
●ヴィンテージ
●ハイブリッド(スタンダード)
●モダン
ヴィンテージスペック
Fenderの黄金期とも言える50年代、60年代、また特徴的な70年代といった当時のルックスやスペックを再現しています。
しかしコスト面の理由や、現代の演奏性に合わせた仕様など、完全な再現ではありません。
特にヴィンテージは 指板ラディアスは7.25″(184mm)ですが、現行品はヴィンテージスペックでも9.5″のものもあります。当時を完全再現した製品はカスタムショップ製のみです。
●6点支持(6本のネジで固定した)トレモロブリッジ
●クルーソンペグ
●トラスロッドナットはボディ側(70年代はヘッド側ブレットナット)
トラスロッドナットはネックエンドに位置し、ネック調整はボディから外す必要があります。トラスロッドの仕込み方でもトーンへの影響はあります。
詳しくはこちら「 【スペックの読み方】トラスロッドの種類とサウンドに及ぼす影響 」参照。
ハイブリッド(スタンダード)スペック
トラディショナルなルックスに、現代的な演奏性やサウンドを組み合わせています。
現在のフェンダーが最も推しているタイプです。従来のヴィンテージには無かったカラーを採用したものも多いです。
●2点支持トレモロブリッジ
●9.5インチ指板ラディアス
●22フレット
モダンスペック
従来のフェンダーにとらわれないルックスや、ハイエンドギターブランドの様に演奏性の高いスペックを有し、高度なテクニックや現代的なジャンルに適応できます。
ある意味フェンダーらしさは一番少ないです。
●2点支持トレモロブリッジ
●コンパウンドラディアス指板
●ロック式ペグ
●22フレット
チューニングが安定し、弦交換もかんたんスピーディに行えるロック式ペグ、
指板はコンパウンドラディアスが採用されるものが多いです。
参考「 【スペックの読み方】指板Radius(ラジアス)による演奏性への影響 」
生産国別シリーズ
フェンダーメキシコ、フェンダーUSAといった呼称も一般的ですが、公式では生産国を積極的に表示していません。
また、フェンダージャパンというブランドは神田商会がライセンス契約を結び展開していましたが、2015年に本国 Fender MusicalInstruments Corporation の日本支社立ち上げに伴い、フェンダージャパンブランドも終了。
日本製フェンダーもあくまでもフェンダー内の1シリーズとしてラインナップされています。ただし、欧米への流通は限定モデルを除きほとんどなく、主に日本、アジアでの展開となっています。
メキシコ製
メキシコのエンセナダ工場で製造されています。アメリカのコロナ工場と同様のもの機械も使われており、メキシコの人件費によってギターの価格が安くなっています。
日本やUSA製よりも細部まで処理していない傾向にはあります。また指板にはローズウッドの代替品としてパーフェローが採用されます。
Player Series
2018年に発売されたハイブリッドスタイル。現在Fenderブランドで最も安価(9万円台前後)なシリーズです。
ストラトキャスターやテレキャスター、ジャズマスターに加え、NAMM2020にて発表されたリード、デュオソニック、ムスタングなど70年代のレアモデルがラインナップされているのも特徴です。
Player Plus Series
2021年に発表されたメキシコ製のモダンスペックにあたるシリーズ。
10万円台というミドルレンジでありながら、速弾きにも十分対応できるほどの快適な演奏性を備え、エフェクターやデジタル機材との相性も良い、バランスの取れた様々なジャンルに対応できる懐が広いギターです。
Vintera II Series
2023年発売のメキシコ製ヴィンテージスタイルのヴィンテラ。
パーフェロー指板が採用されていたメキシコ製ですが、本シリーズではローズウッド指板が復活しました。
伝説的なギタリストたちやヴィンテージギターを扱うプロギタリストと、同じルックスのギターを安価に手に入れられるのが嬉しいですね。
また、ヴィンテージ仕様はフェンダー以外だと選択肢が少ないです。その点からも、ヴィンテージスペックを手頃な価格で入手したいなら、ちょうどよいのがVintera IIです。
日本製のTraditionalやHeritageよりも、USA製のAmerican Vintage IIの傾向(アコースティカルで倍音がある)があります。
Acoustasonic Player
2021年発売。アコースティックギターとエレキギターを融合させた全く新しいギターがAcoustasonicです。
先に発売されていたUSA製を踏襲しながら、約10万円ほど安く仕上げています。
日本製
現在はFender Japan後期から製造している長野県のダイナ楽器にて製造されています。アメリカ製よりも安価ながら、メキシコと異なり伝統的なローズウッド指板を採用しています。
フェンダージャパン時代はヴィンテージスタイルがメインだった日本製ですが、ハイブリッドやモダンなどスタイルの幅が広がりました。
Made in Japan Traditional
2017年に発売し、2020年に仕様変更された日本製ビンテージスタイル。
Fender Japanの流れを汲むJapan Exclusive シリーズを経て登場したのが、トラディショナルシリーズ。
ボディシェイプなど細部はフェンジャパよりも、本家に近づきました。しかしコスト面からバスウッドのボディ材採用はフェンジャパと同様。
2020年にあった最新仕様のレビュー、詳細はこちらの記事をご覧ください。
Made in Japan Hybrid II
2013年に発売された日本製のハイブリッドスタイル。
ボディ材は本家同様アルダーの採用に加え、22本のミディアムジャンボフレットなど演奏性を向上させています。
現在の日本製においてフェンダーらしさと扱いやすさを兼ね備えた、最もおすすめのモデルです。
Aerodyne Special
2022年に発売された日本製のモダンスタイル。
ボディはバインディングを備えたラウンドトップ、ピックガードを廃した新しいルックスが印象的です。
ミディアムジャンボの22フレット、12インチ指板ラディアスに加え、モダンCシェイプを採用したネックなど、テクニカルな演奏にも対応。
Babicz製ブリッジやロック式ペグなどチューニングの安定性を図っています。
Made in Japan Heritage
2020年に発売された、Traditionalシリーズを超えた日本製ヴィンテージリイシュー。
マスタービルダーのマーク・ケンドリックの監修で、ボディやネックシェイプは年代ごとにUSA製品のプロファイルデータを採用した、フェンダージャパンのVSPを進化させたスペック。
アルダーボディに21本のヴィンテージフレット、7.25″ラディアスと、極めつけはニトロセルロースラッカーのトップコートを採用し、質感も再現しています。
Made in Japan Junior Collection
2022年発売。他のモデルとは一線を画すコンセプトのモデル。
約94%サイズダウンし日本人の体型に合わせてたことで、弦が押さえやすいです。ミニギターとは異なりサウンドは本格的なので、キッズや女性はもちろん、男性にもおすすめです。
JV Modified
2022年発売。JVはジャパンビンテージを指し、過去のフェンダージャパンのモデルをモディファイしたようなスペックを有します。
9.5インチ指板による演奏性の向上や、ピックアップ配線追加によるサウンドバリエーションの追加が特徴。
アメリカ製
カリフォルニア州に位置するコロナ工場にて製造されるUSA製。グローバルスタンダードを指標にしたモデルが魅力です。
American Performer Series
USA製のハイブリッドスタイル。一番安価なUSA製で、MIJのヘリテイジやモダンよりも安価。
グレードとしては過去のAmerican Specialに位置します。
“Modern C”ネックシェイプ、9.5インチラジアス指板、22本のジャンボフレットといった演奏性に、本モデルに合わせ開発されたYosemiteピックアップを搭載したほどよくパワフルなサウンド。
70sスタイルのラージヘッドに、定番には無いカラーバリエーションのルックスには独自性があります。
American Professional II Series
2020年発売。パフォーマー同様USA製のハイブリッドスタイル。
ピックアップには80年代にギブソンにてPAF再現の開発をしていたピックアップデザイナーTim Showにより設計された、V-Mod IIピックアップを搭載し、幅広いジャンルに対応できるモダントラッドなサウンドを実現。
背が高く幅が狭いナロートールフレットや、ディープCシェイプネック、ヒールレスカットジョイントなど演奏性も高いです。
American Ultra Series
2019年発売のUSA製のモダンスタイル。過去のAmerican Deluxe、American Eliteを経てこのUltraが発表されました。
モダンスタイルのシリーズでお馴染みのNoiselessピックアップ。この最新作Ultra Noiseless Vintageピックアップもまた、クリアでモダンなトーンをアウトプット。
コンパウンドラディアス指板やネックヒールのコンターなど演奏性は抜群です。2点支持トレモロやロック式ペグによるチューニングの安定性高さ、S-1スイッチによるサウンドバリエーションの多さも本シリーズならでは。
American Ultra Luxe
2021年発売、Ultraの上位機種としてさらにモダンスペックを突き詰めています。
ステンレスフレットの採用や、ネックシェイプ、ボディコンターなどさらに演奏性に磨きをかけています。
American Vintage II Series
2022年発売USA製のヴィンテージスタイル。American Vintageシリーズ、American Originalシリーズを経た後継機種。
特定の製造年のスペックを再現したヴィンテージリイシューでありながら、カスタムショップ製の約半額。
7.25インチラディアス指板など繊細な表現ができる演奏性と、ウッディかつ艶っぽさを兼ね備えたこれぞフェンダーと言えるサウンドです。
Acoustasonic
2019年発売。エレキギターとアコギの融合させた唯一無二の全く新しいギターです。
エレキギターの様な薄いボディでありながら、アコギとも異なる独自のサウンドホールを持った構造。
ボディシェイプにテレキャスター/ストラトキャスター/ジャズマスターの3種類が存在し、それぞれピックアップや内蔵音源が異なります。
Fender Custom Shop
Fender Custom Shopは、高品質なギターやベースを製作するために1987年に設立されたFenderの部門です。通常ラインとは異なり、一流の職人たちが手作業で楽器を製作しており、品質も一線を画します。
Team Built Custom
Fender Custom Shopの専門家チームによって製作されるシリーズ。
各部門の専門家が協力して高品質な楽器を製作します。
Masterbuiltシリーズよりも安価ですが、最も伝統的なFenderの製造方法とも言えます。
以下に紹介するシリーズは、基本的にはこのTeam Builtで製造されています。
Time Machineシリーズ
過去の名器を忠実に再現したヴィンテージスタイルで、最も人気のシリーズです。
Fenderヴィンテージの外観、サウンド、フィーリングの魅力を、現代のプレイヤーに提供します。
Artist Signature シリーズ
アーティスト本人が愛用しているギターを再現しています。
アーティストの個性とスタイルを反映した、特別な仕様で、見た目に特徴があるものも多いです。
Limited Edition シリーズ
Fender Custom Shopは、年間を通じてさまざまな限定モデルをリリースします。
特別なデザイン、マテリアル、仕上げ、または特別なコンセプトに基づいて製作された数量限定のシリーズ。
Postmodernシリーズ
ヴィンテージとモダンの要素を組み合わせたシリーズ。
主に伝統的なルックスですが、コンパウンド・ラディアス指板、ロック式ペグ、改良されたブリッジなどにより、快適な演奏性を備えます。
Vintage Customシリーズ
史実に基づいた伝統的なスペックという点では、Time Machineシリーズと同じです。
Vintage Customは過渡期やレアなスペックを持っています。
例えば1962年式メイプル指板のストラトや、ペイズリーのテレキャスなどです。
Artisanシリーズ
カスタムショップの最高級の木材や材料を使用した、美しく豪華なルックスのシリーズ。
一般的なフェンダーであまり使われることが無い、エキゾチックな木材、精巧なインレイや装飾が特徴です。
Masterbuiltシリーズ
Fender Custom Shopの最高峰。
経験やキャリアなど選ばれしマスタービルダーによって、1本1本丁寧に作られます。
オーダーから完成まで数年待ちは当たり前で、価格は100万円を超えます。
まとめ
以上、そのほかモデルによって生産国が異なるArtist Series、LimitedEditionなども存在しますが、現在のフェンダーの多岐にわたるシリーズの紹介でした。
ヴィンテージ、ハイブリット、モダン、この3つのタイプから決めてから、グレード(生産国)を検討すれば、求めているモデルに出会えるでしょう。
既に生産完了したシリーズはこちらの記事でまとめてあります。