エレクトリックアコースティックギターとして、日本のみならず海外でも高い評価を得ているブランドTakamine(タカミネ)。
そんなタカミネの価格の理由、独自の特徴とそれらのメリット・デメリットを、現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)がガチレビューです。
日本製で比較的安価
日本製ならではの丁寧なつくりや塗装の美しさがあるにも関わらず、10万円以下のモデルも多数あるタカミネ。
その秘密は、徹底した効率的な生産体制による大量生産にあります。
効率的な生産としては、ほとんどのタカミネのギターは下記の共通スペックを持っています。
これにより使用する材料が共通で使えるためコストが下げられます。
また無駄も排除しており、例えばヘッドストック。
初期のモデルより2000年代以降のモデルはヘッドのデザインがシュッと細くなりました。
昔のラージヘッドはネック材に木材を継ぎ足す必要がありましたが、現在はネック材からそのままヘッドを削り出せます。
実はサウンドホールのパーフリングもコストカットに一役買っています。
一般的なギターの指板エンドは右画像のもの。
タカミネは指板エンドがサウンドホールに沿う形になっており、この部分のパーフリングを埋め込む作業も簡素化できる、という具合です。
そして大量生産を可能にしている最大の理由は、実は生産したギターの8割以上が海外へ輸出しているのです。
海外ではESPがディストリビューターとなっています。
もうひとつは残念ながら人件費もあるでしょう。工場勤務のギター製作者の給料は、ほかの職種と比べてもかなり少ないようで、ある意味楽器業界の闇ではありますね・・・。
ネックの強度
ネックの反りを調整するトラスロッド。
従来のトラスロッドの多くは順反り方向にのみ効くものでした。
弦の張力に負けて順反りするのが一般的でしたが、湿度の変化により逆反りすることも珍しくありません。
Takamineのギターに仕込まれているロッドは、順反りと逆反りいずれの方向にも対応できます。
またネックの付け根部分の指板の下、トラスロッドの両サイドにサイドビームと呼ばれる補強材が仕込まれています。
これはトラスロッドの調整できない、ハイ起きの予防に一役買っています。
70-80年代の放置されていたヤマハやモーリスのギターでこのハイ起きが良く起こっています。
左右非対称ネック
ネックシェイプは一般的なギターのように、中心から左右対称、という風になっていません。
ネックの一番厚いところを中心から高音弦側に少しずらした左右非対称になっています。
手にフィットし、手首に負担をかけないネックシェイプです。
ダブルサドル
アコースティックギターのサドルは通常ひとつの材質で、その加工により例えば2弦が乗る頂点をブリッジ側に近づけたり、といった形になっています。
これは各弦のチューニングを正確に近づけるためですが、
タカミネのサドルは大胆にも1と2弦、3から6弦で2つに分かれています。
これにより各弦でのスケールを微調整し、どのポジションやコードでも安定したピッチを目指しています。
オリジナル専用プリアンプ
全4種類のプリアンプがあり、薄型ボディ専用のTSPを除く3種類は互換性があります。
チューナーやイコライザーに加え、上位機種にはハウリングを予防するノッチコントロールや2つのピックアップのサウンドをブレンドさせるなど
エレアコサウンドはかなり積極的に音作り可能です。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
オリジナルピックアップ
ピックアップもいくつか種類がありますが、すべてのエレアコに搭載されているのが、パラスティック・ピックアップ。
構造上ハウリングしづらいのも特徴です。
このピックアップのサウンドもタカミネのキャラクターを大きく決定づけておりますが、
サウンドは低域から高域までかなりレンジが広く、それを前述のプリアンプで作りこむという
タカミネのピックアップ+プリアンプで使うことが前提となっていると思っています。
逆に言うと、アンプにつなげばとりあえずすぐに良い音という感じではないですね。
【デメリット】堅牢性と引き換えに落ち着いた生鳴り
トップとバックは単板ですが、サイドのみ合板というモデルが多いです。
同様にダブルサドルもピッチ面では有利ですが、1本のサドルよりも弦振動のエネルギーが分散してしまっているイメージがあります。
あくまでも エレアコ として使われることに焦点が当てられており、お世辞にもアコギとして良く鳴っているとは感じません。
これはもちろん、エレアコでの音作りのしやすさと、大音量でもハウリングしづらいといった別のメリットを優先した結果と言えます。
また塗装の仕上げも綺麗ですが、頑丈さを感じ、それが鳴りを阻害している感もあります。
これもツアーが多いアーティストにも信頼されている状態が安定するというメリットを優先しています。
あのBon Joviをはじめスタジアムクラスで、世界をツアーするアーティストに使われている理由のひとつでもあります。
結果、純粋なアコースティックギターよりもボディ全体が響き、倍音が豊かな感じはありません。
つまりタカミネはこんな人におすすめです。
ロックバンドなど音量が大きめなアンサンブルで使う
頑丈で状態が安定し、長く愛用したい