Fender Japanと比較 Fender Made in Japan Traditionalシリーズ レビュー

2020年3月下旬Traditionalシリーズに仕様変更がありました。

先ずはこのシリーズの基となったフェンダージャパンの変遷から

フェンダージャパンの設立と終焉

富士弦楽器製造期

1982年、コピー品の横行に辟易した本国Fenderと富士弦楽器製造が中心となりフェンダー・ジャパン株式会社を設立。

富士弦楽器製造が日本製のスクワイヤーやフェンダーを製造。

このフェンジャパ最初期のJVシリアルにはジャパンヴィンテージとしてもプレミアがついています。

この時期があったからこそ、当時富士弦楽器製造にお勤めだった杉本眞氏が後のFender Custom Shopの立ち上げ時の技術指導などにあたっています。氏はその後、独立しSugi Musical Instrumentsを立ち上げSugi Guitarを製造していますが、それはまた別のお話。。。

その後、1985年にCBSがフェンダー社を売却。

アメリカでの生産拠点を失ったフェンダーがコロナ工場の完成まで、 世界流通のフェンダーも富士弦楽器製造が生産していました。

いわゆるフェンダーUSA(厳密にはこのブランド名はありませんが)の Vintage re-issue seriesの製造も1987年までは日本製だったのです。

つまり中古市場でも人気のフジゲン製は97年製(V + 6桁数字のシリアル)までとなります。

神田商会期

その後1997年に神田商会 がフェンダーブランドの使用許諾を得てフェンダージャパンの監修にあたります。

そのためこの時期はフェンダー本社は設計などには関わっていない日本オリジナル仕様となっています。

しばらくは東海楽器製造(ODMブランドTokai)や寺田楽器(GretschのOEM元)などにて木工、組込をダイナ楽器にて製造。

この時期シリアルナンバーの上にはCrafted in Japanと表記されます。

ちょっとひっかかる表記なので、木工に海外工場も含まれていた可能性もあります。

2008年には設備投資されたダイナ楽器にて全行程を行うことが可能となり、晴れてMade in Japan表記に戻ります。

JD12以降のシリアルナンバーはJD(ジャパン・ダイナ)の後の2桁が西暦の2桁となります。

これは現在のMade in Japanシリーズにも引き継がれています。

その後2015年に本国 Fender Musical Instruments Corporation が日本支社立ち上げに伴い、フェンダージャパンブランドは終焉を迎えます。

Fender Musical Instruments Corporation期

アジアを中心としたグローバルなマーケットを視野に入れ日本支社を立ち上げたフェンダーが改めて新製品の企画をすることは当然ですが、

完成まで時間もかかります。

それを埋めるためにフェンダージャパンとほぼ同じ仕様の

Japan Exclusiveシリーズなるものを販売していました。

ちなみにフェンダーは代理店や卸問屋を通さず、小売店との直取引の契約を結ぶこととなりましたが、契約店舗が少なすぎて取り寄せなどができない時期が続きましたが、大手は過去の大量の在庫で対応していたようです。

ちなみに1号店はなぜか静岡県のクエストミュージックという地方の楽器店。正直これ以外でこの会社の名前は聞かないので増々なぜ?という感じですw

前置きが長くなりました。

ついに本国フェンダー監修の日本製フェンダー第一弾がこちら

Made in Japan Traditional Series

フジゲン期のフェンジャパと比べ高額になっており、一部ユーザーからは非難の声が上がっています。

わたしはこの値上げには3つの要因があると考えます。

●1つめは単純に時代の要因。人件費を含むコストの増です。
●2つめは製造工程にこだわり手間が増えたこと。なので品質も上がっています。
●3つめはより海外の市場を見据えた”日本製”というブランドの創出です。

設計はマスタービルダーの Chris Fleming (クリス フレミング) が担当し、

様々な部分で、USAやメキシコでのフェンダー直系の構造が採用されています。

スペック

トラディショナルはフェンダージャパン同様、ヴィンテージスペックに準じています。

プレイアビリティに直結するフレットサイズと指板ラディアスは

お世辞にも弾きやすい仕様ではなく、

フェンダージャパンの頃から思ってはいたのですが、この価格帯のターゲットユーザーに向けるべき仕様ではないと思います。

184mm(7.25inch)の指板ラディアスは弦高が下げづらく、またチョーキングの音も詰まりやすくなります。

基本的にボディにはバスウッドが採用されています。

バスウッドについての私見はこちらの記事を

ネック

ギターの木部において最も重要な箇所であるネック。

トラスロッドによるサウンドの影響をご紹介した記事はこちら

今回のMade in Japanシリーズよりこのロッドの仕込み方を、本国のMade in USAの工法へ大幅に変更しました。

1-wayのトラスロッドに変わりはありませんが、従来のモデルに比べ可動域が広く取られています。

また、トラスロッドの溝を木材で埋める際には従来のタイトボンドでなく、フェンダー、ギブソン共にヴィンテージでも使用されているニカワを使用しています。

指板の接着も熱による瞬間接着から、USA同様のファイヤーホースクランプという、消防用ホースに空気を入れ上部から圧縮する方法を採用。

これらにより、ネックの安定性は格段に向上。

ぶっちゃけジャパンエクスクルーシブ以前のものは店頭入荷時にほぼほぼ順反りしていましたが、

最近のモデルにそんな印象は無いです。

加えてフレットタングの長さとフレット溝の深さが同じ長さのため、

フレットと指板材の接地面積が広くなり

強度が上がっているという事とこの構造により、ネックがしっかり響き、鳴りも良くなってます。

フレットエッジの処理もより滑らかに仕上げられております。

このあたりもクリスフレミングのこだわりかと。

これもコストが上がった要因のひとつですが、これは良い事ですね。

塗装

塗装自体はポリエステルで変わりはありませんが、

塗膜を薄く仕上げており、鳴りの向上を図っています。

ディテール

あとは細かいところですが、

Fenderデカールもヴィンテージスタイルで、クリアを吹いてその上から水貼りしています。

シリアルナンバーの位置も、ジョイント上のネック裏から

ヘッドストックの裏に変更されています。

プラスチックパーツもエイジドカラーを採用。

テレキャスターにおいてはボディの外周のRを5mm角から3mm角に変更しています。

総評レビュー

先ずはフェンダージャパンからの値上がりについては

ロッドの仕込み方、フレットエッジ処理などクオリティの向上もそうですし、

現在の市場の競合など考慮すれば、妥当だと思います。

フェンダーはアンディムーニー(元ナイキやディズニーのビジネスマン)がCEOに就任してから

Fenderというブランドで商売しようとしています。

まぁダイナ楽器製は総じて安過ぎますし、それが業界の衰退の一因になっていますし。

そして、新品でFenderブランドが欲しい方でかつ安価なものを求めている方には

先にも申し上げた通りヴィンテージスペック、つまり本Traditionalシリーズはおすすめしません。

メキシコ製のPlayerシリーズがありますので、安くてフェンダーが欲しいならこちらでよろしいかと思います。

日本製と比較するとフレットエッジ処理などは少し粗さを感じます。

つくりの丁寧な日本製フェンダーが欲しいならHybrid Seriesの方が断然オススメです。

2020年3月下旬Traditionalシリーズに仕様変更がありました。

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