YAMAHA FG/FS 800シリーズ違い比較【現行全機種バリエーション】

現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、初心者に人気のアコースティックギターであるYAMAHAのFG/FSシリーズを徹底解説します。

サイズの違いによるメリット・デメリットや、シリーズごとの特徴や選び方がわかります。

全11機種FG/FSシリーズ800番台品番の読み方

最初のアルファベット2文字(FGまたはFS)は、ボディの形を表します。

その次の3桁の数字がグレードを表します。それぞれの詳細は後述します。

例えば FS820 の場合は、FSシェイプで、グレードが820=スプルーストップ+マホガニーサイドバック、という具合です。

※FG820のみ、品番のそのあとに「-12」が入ると12弦ギター、「L」が付くと左利き用を表します。

ボディ:FG/FSの違い比較

FG FS
タイプトラッドウェスタンタイプフォークタイプ
ボディ長505mm497mm
ボディ幅412mm380mm
ボディ厚100~118mm90~110mm
全長1038mm1021mm
ナット幅43mm43mm
指板幅
(ボディ接合部)
55mm52mm
弦長(スケール)650mm634mm
サイズ大きい中くらい
メリット・迫力のあるサウンド・バランスの良いサウンド
・弦を押さえる力は少し弱くて良い
・抱えやすいボディサイズ
デメリット・弦を押さえる力が必要・FGより音圧は弱い

FGとFSの違いはボディの形・大きさと、スケールの長さが異なります。

そしてこのトラッドウェスタンタイプとフォークタイプという形は、ヤマハのオリジナルで他のブランドには存在しません。

FG(トラッドウェスタンタイプ)

○迫力のある音色

△音量がデカい

△大きさを感じる抱え心地

✕弦を押さえる時に力が必要

他ブランドを含めてもアコギの中でそこそこ大きいボディサイズです。

ボディが大きいと音量が大きく、低音域がガッツリ出てくる迫力のあるサウンド傾向があります。なのでピックでジャカジャカ弾くととても気持ち良いです。

相対的に高音域が弱くなるので、指で爪弾きバランス良く鳴らすにはテクニックが必要です。

スケールが650mmと長いため弦の張力が強くなるため、これもまた音量・音圧が高くなる要因になっています。一方で弦を押さえるのに力が必要になります。

音量の大きさは普段家で弾くことが多い人には思いっきり鳴らせず、デメリットになる場合もあります。

また抱え心地については一部ボディが大きい方が安定感があって良いという人もいますが、多くの人には大きいゆえに窮屈に感じるようです。

FS(フォークタイプ)

○バランスの良い音色

○無理のない抱え心地

○弦の張力が少し柔らかい

ボディサイズは少し小ぶりで薄い、ちょうど良い大きさ。FGよりやや低音域が落ち着いている事により、低・中・高音域にわたってバランスの良い音色。

小さければ良いわけではなくミニギターでは音圧が無くなってしまいますが、FSはジャカジャカと弾き語りにも良し、爪弾いても良しのバランスの良さが特長です。

またコンパクトで少し薄いボディは、中学、高校生の学生から女性、シニアもちろん男性まであらゆる人に無理なく持てる大きさもメリットです。実際にお店で多くの初心者に試しに持ってもらいましたが、FGよりFSサイズの方が抱えやすいと感じる人が多いです。

一般的なスケール長であるFGは650mmなのに対し、FS820は634mmで16mm短くなっています。

わずか1.6cmの違いですが人間の手の感覚は本当に繊細なので、初心者でもその違いがわかります。そしてその違いには嬉しいメリットが2つあります。 

①弦の張力が弱くなる

スケールが短いと弦の張力が弱くなるため、左手で弦を押さえる時の力も少なくなります。

②フレットの間隔が狭くなる

フレットとフレットの距離も短くなるため、特に複数の弦を押さえるコードなんかも指を開く距離が少し狭くなり負担が軽減されます。

まとめるとスケールが短いと弦を押さえやすくなるメリットがあると言う事です。

とは言え、スケールが短過ぎると音程が不安定になったり、音色に迫力がなくなるなどのデメリットも出てくるのでFSは良いとこ取りのスケール長であると言えます。

スケールについて詳しくはこちらの記事(【スペックの読み方】アコースティックギターのスケール長さ)をご覧ください。

初心者に一番おすすめのモデルはFS800

ヤマハが良いと思うけど機種がありすぎて迷うという方、ご安心ください。

先に結論を申しますと、ズバリ初心者に一番おすすめのモデルはFS800です。

その理由は

・約3万円で一番安い

・弾きやすさは全グレード一緒

・この中での音の違いには敏感になる必要はない

FGよりFSの方が万人にとって弾きやすい

まずグレードの違いは、木材と装飾の違いです。

その他の構造や生産工程は同じなので、弾きやすさに違いはありません。

そして木材が違うと音も違う訳ですが、めちゃめちゃスゴく違う、というほど(特に初心者においては)劇的な違いではありません。

FS800とFS850を比べて「850の方が音が良過ぎて800の音色じゃ練習にならない」なんて理由で辞める人はまず存在しません。

であれば安い方が嬉しいですよね?

同じく「FSの音よりもFGの音じゃないとダメ!」となることもありえません。

でも「弾くのが大変だから!」で辞める可能性は結構高いんです。

だから弦が柔らかくて抱えやすいFSがおすすめなんです。

そのほかの特徴など、より詳細な解説はこちらの記事をご覧ください。

関連記事

【3万円アコギ最適解】YAMAHA FS800レビュー【初心者おすすめ】 ・初心者に人気のアコギが知りたい・ネットで評判の良いFS800実際どうなの?・FG800とFS800はどっちが良い? という[…]

選び方

FS800をおすすめとしましたが、見た目の違いは初心者でもかなり重要なポイントです。

というのも、見た目が好きなギター→テンションが上がる→頻繁に手に取って鳴らしたくなる→つまり上達に不可欠なギターの練習の回数が増える。というものです。

結論、グレードの違いで音にこだわらなくて良いから、見た目にこだわって選んでください!ということです。

ヤマハに限らず最初の1本目のギターの選び方は

①弾きやすい品質のもの

②持ちやすさ・弾きやすさ

③見た目の好み

選び方①:弾きやすい品質のもの

この点について説明した通り、ヤマハは合格点です。

選び方②:持ちやすさ・弾きやすさ

これも万人に抱えやすいサイズ、スケールが短く弦を押さえやすいという点でFSがおすすめ。

ただし見た目の方が勝つならFGを選んでも良いです。

選び方③:見た目の好み

実はここが一番大事なポイント。

一番おすすめのFS800はカラーバリエーションが無く、装飾も無いシンプルなデザイン。だからコストが抑えられて安いという事でもあります。

↓この色が好き、というものがあれば他のグレードを選んでOK。

FSをおすすめしてはいますが、「大きいサイズのFGがカッコいい」、「身体が小さい女子だからこそ大きいギターを抱えている方がかわいい」というルックス的な理由があるならFGを選んでもOKです。

それではグレードの違いと全機種のご紹介です。お財布と相談のうえ一番見た目が好きなやつをお選びください。

木材:グレードの違い比較

トップ材サイドバック材市場相場価格
850マホガニー単板マホガニー合板49,500円
840スプルース単板フレイムメイプル合板46,750円
830スプルース単板ローズウッド合板39,270円
820スプルース単板マホガニー合板34,595円
800スプルース単板ナトー合板 or オクメ合板31,790円

グレードの違いは使用しているボディの木材の違いと、それによる価格の違いです。

ちなみにサウンドに大きな影響を及ぼすトップ材ですが、すべてのモデルで響きが良い単板を使用しています。ここはヤマハのこだわりですね。

コスト削減と品質安定の観点からサイドとバック材には合板を使用しています。カタログには合板と書いていませんが、単板はわざわざ書いてあるので、合板と書いていないのはそういうことです。個人的にこれはギター業界の悪しき習慣だと思っています。不親切ですよね。。。

それではそれぞれのボディ木材の特徴による音色の違い解説と、カラーバリエーションのご紹介です。

重ねて申し上げますが、音色と見た目の印象で迷ったら、見た目を優先してください。

FG850/FS850

FG850
FS850

唯一トップ材にマホガニーを採用したモデル。サイドバックも同様にマホガニー。

ドライで落ち着いたサウンドです。

木が暗い茶色なので見た目も他とはかなり異なる印象。

FG840

FG840

トップ材にはスプルース、サイドバックにフレイムメイプルを採用。

フレイムメイプルは通称トラ目とも呼ばれる美しい木目が特徴です。

硬質で明るいサウンドです。

なおFSシェイプの840は存在しません。

FG830/FS830

FG830N
FG830AB
FG830TBS
FS830N
FS830DSR
FS830TBS

トップ材にスプルース、サイドバックはローズウッドを採用。

最も有名なアコースティックギター、マーティン社のD-28に代表されるアコギで最もポピュラーな木材の組み合わせです。

輪郭のある低音域ときらびやかな高音域のバランスに優れたサウンドです。

FG820/FS820

FG820N
FG820AB
FG820TBS
FG820BS
FG820BL
FS820N
FS820AB
FS820RR
FS820TQ
FS820BL

トップ材にスプルース、サイドバックにはマホガニーを採用しています。

D-28に並ぶ定番機種であるギブソン社のJ-45と同じ組み合わせです。

中低域に存在感がある、あたたかみのあるサウンドです。

FG800/FS800

FG800
FS800

一番安いですが、ヤマハクオリティの弾き心地が手に入る、一番おすすめの機種です。

トップ材にはスプルース単板、サイドバックにはナトー材もしくはオクメ材が使われる。これは生産時期によって確保できた方の木材を使用しています。

サウンドは820に似た感じですが、それより少し柔らかい印象です。

またネックにバインディングと呼ばれる縁取りが800にはなく、シンプルなルックスになっています。

FG820 左利き用/12弦

FG820L
FG820-12

FG820のみ左利き用のFG820Lがあります。

同じくFG820-12という12弦ギターがありますが、こちらは弦が12本もあるため初心者向きではありません。

ここまでお好みのルックスのギターが無い、、、という方はSTORIAもご検討ください。

Twitterで気軽に交流しましょう!