Fender Player Plus Stratocasterレビュー【Player/Hybrid II/Modern違い比較】
現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)です。
・幅広いジャンルで使えるけど、モダン過ぎないギターが欲しい
・5万円前後以下からのギターの買い替えで弾きやすいギターが欲しい
という人たちにおすすめできるギター、Fender Player Plus Stratocaster(フェンダー プレイヤー・プラス・ストラトキャスター)をレビューします。
前情報やスペックを見る限りではさほど期待していなかったのですが、いざ実際に触ってみるとかなり感触が良い、というのが率直な感想です。
Player Plus Telecaster のレビューはこちら
Player Plus Stratocaster特徴
①:弾きやすいモダン特化型の演奏性
②:チューニングの安定を図るロック式ペグ/2点支持トレモロ
③:新開発の専用Noiseless Pickup搭載
④:プッシュ–プルポットによるサウンド幅
⑤:新カラーを含むカラーバリエーション
特徴①:弾きやすいモダン特化型の演奏性
指板はフラット気味な12インチラディアス、ミディアムジャンボサイズのフレット、指板サイドを丸めたモダンCシェイプネックといった、弾きやすさに特化したスペックを採用しています。
左手は軽い力で弦を押さえることができます。
特徴②:チューニングの安定を図るロック式ペグ/2点支持トレモロ
トレモロブリッジは2点支持のためアーミング操作はスムーズ、かつロック式ペグも相まってチューニングの安定性が高いです。
他にもロック式ペグは弦交換が手早く簡単に行えるのもメリットです。
特徴③:新開発の専用Noiseless Pickup搭載
Player Plusシリーズのために新たに開発されたPlayer Plus Noiseless™ Strat®を搭載。
ノイズレスピックアップの名の通り、シングルコイルピックアップにありがちなジーっとなるハムノイズを除去しており、クリアで澄み切ったサウンドが特徴。もちろん歪ませても安心です。
エフェクターの乗りも良く、現代的なジャンルや宅録でも扱いやすいサウンドです。
ハムバッカーのPlayer Plus Humbuckingは適度なゲインと甘ったるくないバランスの取れたサウンドで、見た目に似合わず(?)ディストーションとの相性も良い感触です。
特徴④:プッシュ-プルポットによるサウンド幅
Player PlusStratocaster には3シングルピックアップモデルと、リアにハムバッカーを搭載したHSSの2モデルを展開。
トーン2のポットはプッシュ-プルになっており、従来のストラトのピックアップセレクターに加えた特殊配線によるサウンドが得られます。
SSSモデルではリア選択時とリア+センターのハーフトーン選択時、トーンポットを引っ張るとフロントピックアップも追加できます。
つまりフロント+センターによるテレキャスター的なハーフトーンと、3つのピックアップ全てによるパラレル(並列)接続によるトーンが得られます。
HSSモデルではトーンポットのプルにより、リアのPlayer Plus Humbuckingピックアップのコイルタップ(疑似シングルコイル)ができ、通常の3シングルピックアップのストラトのように扱えます。
またボリュームコントロールにはAmerican Professional IIでも好評の、トレブルブリードサーキットを搭載。
これはボリュームを絞ってもハイ落ちしないようになっています。
特徴⑤:新カラーを含むカラーバリエーション
Player Plusシリーズではこれまでに無かった新色も追加しています。
3シングルコイルピックアップのPlayer Plus Stratocasterは、左から
Tequila Sunrise、Opal Spark、Aged Candy Apple Red、Olympic Pearl、3-Color Sunburstの全5色。
HSSピックアップのPlayer Plus Stratocaster HSSは左から
Belair Blue、3-Color Sunburst、Cosmic Jade、Silver Burstの全4色。
デメリット
・モダンなためフェンダーらしさは少ない
デメリット①:パーフェロー指板
現在フェンダーではローズウッド指板モデルは存在せず、代替品としてよく使われるパーフェロー指板が採用されています。
フェンダーいわく見た目も音もローズウッドに近い、とありますがサウンドはローズウッドよりも硬質になります。
つまりメイプルとパーフェローそれぞれの指板がありますが、サウンドに大きな近いがなく本体カラーも含め見た目で選んでokという感じです。
詳しくはこちらの記事もご覧ください。
デメリット②:モダンなためフェンダーらしさは少ない
Player Plusシリーズは演奏性もサウンドも現代仕様にしているので、古き良きFenderスタイルが欲しい人にとっては失望するかもしれません。
フェンダーのこれまでのモダンスタイルシリーズ、USA製ならAmerican Deluxe, Elite, Ultraなど、日本製ならModernはこと日本においてはベストセラーとは言い難いのが事実です。
日本市場ではフェンダーに求められるフェンダーらしさとは、良い意味でのいなたさがニーズとしては大きいと感じます。
しかし実際本国ではそんなことはなく、汎用性の高さや利便性を求めつつFenderブランドが好きな人に愛用されています。
またこれまでのモダンスタイルのフェンダーはアメリカ製で20円台中盤から30万円台が当たり前で、その金額だと他ブランドにもモダンスタイルギターの競合が多いのも事実。
今回のPlayer Plusシリーズは10万円台前半の価格にして、モダンスタイルという他ブランドでも選択肢が少ないのでこれまでとは違うニーズを満たしてくれています。
Player Stratocasterとの違い比較
Player Plus | Player | |
ボディ | アルダー | アルダー |
ボディフィニッシュ | グロスポリエステル | グロスポリエステル |
ネック | メイプル | メイプル |
ネックフィニッシュ | サテンウレタン | サテンウレタン |
ネックシェイプ | モダンC | モダンC |
指板 | メイプルorパーフェロー | メイプルorパーフェロー |
指板ラディアス | 12″(305mm) | 9.5″ (241 mm) |
フレット | 22, ミディアムジャンボ | 22, ミディアムジャンボ |
ナット幅 | 1.685″ (42.8mm) | 1.650″ (42 mm) |
ペグ | ロック式/デラックスキャスト | スタンダードキャスト |
スケール | 25.5″ (648mm) | 25.5″ (648mm) |
ブリッジ | 2点支持/ブロックサドル | 2点支持/プレスサドル |
ピックアップ | Player Plus Noiseless Strat | Player Alnico 5 Strat |
コントロール | ボリューム、トーン1(フロント/ミドル)、トーン2(リア) | ボリューム、トーン1(フロント/ミドル)、トーン2(リア) |
トーンプッシュ-プル | SSS:フロントPU追加 HSS:リアハムのコイルタップ | なし |
生産国 | メキシコ | メキシコ |
市場相場価格 | 123,750円 | 87,780 円 |
現在Fenderブランドで最も安いPlayer シリーズとの違い比較です。
結論は、従来のFenderらしさを備えているのがPlayerシリーズ、現代的な利便性を備えているのがPlayer Plusシリーズです。
価格差約35,000円。総合的に納得できる価格差ではあります。
両方実際に触って特に大きな違いを感じたのが、弾きやすさです。
特に手が馴染むようネックのエッジが丸めてあるなど、スペック面以外にもさらに手間ひまがかけられていることで弾き心地も向上しています。
もう一つ大きな違いはサウンドとそのバリエーションです。
Player Stratocaster のサウンドはやや出力が低く、往年のフェンダーのいなたいサウンドを出力します。
一方Player Plus Stratocaster はノイズレスピックアップらしい、クリアでバランスの整ったサウンド。プッシュプルポットによるサウンドバリエーションも備えており、幅広いジャンルに対応し、宅録にも向いています。
こちらの動画の15:20からサウンドの比較が聞けます。私の感想が伝わるでしょうか。
・Fenderブランドが欲しいけど安いものが良い
・Fenderらしさがある、昔ながらのサウンドがほしい
Fender Player Stratocastserの個別レビュー記事はこちら
Made in Japan Hybrid II/Modern Stratocasterとの違い比較
Player Plus | Hybrid II | Modern | |
ボディ | アルダー | アルダー | アルダー |
ボディフィニッシュ | グロスポリエステル | グロスポリウレタン | グロスポリエステル |
ネック | メイプル | メイプル | メイプル |
ネックフィニッシュ | サテンウレタン | サテンウレタン | サテンウレタン |
ネックシェイプ | モダンC | モダンC | コンパウンド モダンC to D |
指板 | メイプルorパーフェロー | メイプルorローズウッド | メイプルorローズウッド |
指板ラディアス | 12″(305mm) | 9.5″ (241 mm) | 9.5″ to 14″ (241 mm-355.6 mm)コンパウンド |
フレット | 22, ミディアムジャンボ | 22, ナロートール | 22, ミディアムジャンボ |
ナット素材 | 人口骨 | 牛骨 | 牛骨 |
ナット幅 | 1.685″ (42.8mm) | 1.650″ (42 mm) | 1.675″ (42.5 mm) |
ペグ | ロック式/デラックスキャスト | ロック式/ヴィンテージスタイル | ロック式/デラックスキャスト |
スケール | 25.5″ (648mm) | 25.5″ (648mm) | 25.5″ (648mm) |
ブリッジ | 2点支持/ブロックサドル | 2点支持/プレスサドル | 2点支持/ブロックサドル |
ピックアップ | Player Plus Noiseless Strat | Hybrid II Custom Voiced | 4th Generation Noiseless |
コントロール | ボリューム、トーン1(フロント/ミドル)、トーン2(リア) | ボリューム、トーン1(フロント)、トーン2(ミドル/リア) | ボリューム、トーン1(フロント)、トーン2(ミドル/リア) |
トーンプッシュ-プル | SSS:フロントPU追加 HSS:リアハムのコイルタップ | なし | HSS:リアハムコイルタップ |
生産国 | メキシコ | 日本 | 日本 |
市場相場価格 | 123,750円 | 108,900円 | 168,300円 |
続いて日本製フェンダーで価格が近いHybrid IIシリーズと、同じくモダン仕様のModernシリーズとの違い比較です。
一番印象的なのは今ままで指摘されてきた「メキシコ製は日本製よりも雑な仕上げ」という部分に関して、今回のPlayer Plusシリーズではかなり払拭できています。
指板及びフレットのエッジ仕上げ、ナット溝の仕上げなど演奏性に関わる部分では大差ありません。
また日本製にはローズウッド指板が採用されており、粘り・泥臭いサウンドを求めるなら日本製の方がしっくりきます。
この3機種においてはわたしも大好きなロック式ペグが採用されています。
Player Plus vs Hybrid II
Hybrid IIは演奏面でも往年と現代の中間的なFenderスタイル、Player Plusは現代的な快適さに振り切ったスタイル。
Hybrid II もPlayerと同じく、牛骨ナットやローズウッド指板モデルなどの恩恵もあり往年のFenderのキャラクターを持っています。
フレットがナロートール、サドルがプレスサドルなどFenderならではの繊細さがありつつも、程良い快適さを持っています。
サウンドに関してはどちらも現代的なクリアでバランスの良いサウンドという、大枠では近しいキャラクターです。
配線によるサウンドバリエーションはPlayer Plusに分があります。
・扱いやすさがありつつも、Fenderの繊細さが欲しい
Fender Hybrid II Stratocastserの個別レビュー記事はこちら
Player Plus vs Modern
結論は、Modernシリーズがラウド・ヘヴィディストーションが得意、Player Plusは幅広くバランスが良いというサウンドの違いが大きいです。
ピックアップはシングルはUSA製American Eliteにも搭載された第4世代ノイズレスPU、ハムバッカーはオリジナルのModern Modified Humbuckingを搭載。
ピックアップ配列は、3シングル、HSS、HHの3バリエーションで展開されています。
従来フェンダーが苦手な、メタルをはじめとするラウドミュージック系のディストーションサウンドをModernは得意としています。
逆にハイゲインが必要なければPlayer Plusの方がバランス良く扱いやすいサウンドと言えます。
またルックス面において、Modernはかなり従来のフェンダーから離れてしまっています。
ボディトップが弧を描いておりボディエッジにはバインディングが巻かれ、滑らかさはありません。2ハムバッカーモデルに関してはピックガードすらありません。この辺りは好き嫌いですがハッキリわかれますね。
個人的に2ハムモデルまで行くと振り切っていて好きですが、HSSは魅力に欠ける印象。
Player Plusに関してはボディのデザインも含め、形は従来のフェンダーから逸脱せず新しいカラーが採用されているだけなのでこちらの方が受け入れられそうな印象です。
演奏性に関してはModernはテクニカルなプレイヤーに人気のコンパウンドネック&ラディアス指板を採用。
Player Plusはコンパウンド指板が採用されていませんが、演奏性においても劇的な差は無く、Modernシリーズとの比較検討の仕方はルックス面がメイン、次いでサウンド面だけ考慮すれば良いでしょう。
・ラウドロック、メタル系のジャンルでFenderを使いたい
Fender Player Plus Stratocasterまとめ
実機を触ってみて、想像以上に完成度の高い、また競合も少ない絶妙な製品だったというのが正直な感想です。あまり期待していなかった分(失礼)、かなり好印象です。
さすがにハイエンドギターには及びませんが、速弾きなどには十分対応できる快適な演奏性を備え、エフェクターやデジタル機材との相性も良い、バランスの取れた様々なジャンルに対応できる懐が広いギターです。
シェクターのSD-2やアイバニーズのRGでは、見た目も機能もモダン過ぎるという人にも、ちょうど良い塩梅で扱いやすいのではないでしょうか。
・シングルコイル用など宅録向きのサブギターを探している
・汎用性の高い便利なギターが欲しいが、モダン過ぎるギターは敬遠してきた
・ベーシストなどギタリスト以外のプレイヤーが、エレキギターを1本持っておきたい
ちなみにPlayer Plus Stratocasterを探していると「Player Stratocaster HSS Plus Top」というモデルに遭遇するはずです。これはPlayer Plusシリーズではなく、Playerシリーズにメイプルの木目をボディに配した”Plus Top”、つまり中身はPlayerシリーズですので要注意。