エレキギターはスペック(仕様)から演奏性やサウンド傾向が比較的把握しやすい楽器です。当ブログでは【スペックの読み方】と題し、スペックの違いによるギターのキャラクターの違いを説明します。
ネットで好みのギターを探したり、オーダーメイドする際の参考になれば幸いです。
では今回のテーマはスケール
【スペックの読み方】スケール
スケールとはナットからサドルまでの長さです。Fender Japanなどではナットから12フレットまでの長さが表記されることもあります。
スペックにはScale、もしくは弦長などと表記されます。
スケールは、弦のテンション感に影響します。
テンションの違いによるサウンドへの影響
テンションは弦のゲージ(太さ)比例しますし、スケールが長いほどテンション感は増します。
テンションが増すと押弦に力が必要になります。
その一方でサウンドにハリが出て、サウンドがタイトになります。芯が出ると表現できそうです。
コードやアルペジオの演奏では、弦の1本1本分が際立つ、俗にいう分離感がありクリアな印象です。
逆にテンション感が減るとその逆です。サスティンが長くなる感覚もあります。
サウンドは太い、温かみのある、まとまったサウンド、という感じです。
なぜか太いゲージを使っている方がエライみたいな風潮があったりしますが、大事なのはしっかり演奏出来ているか、いい音で奏でているかが大事です。
ゲージの弦=強いテンションでそのイメージ通り図太いサウンドを奏でるStievie Ray Vaughanのようなギタリストもいれば、ビッグなサウンドを奏でるEddie Van Halenは弦が細かったとも言われています。
ざっくりまとめると、
テンションがキツイ・・押弦に力が必要。サウンドはタイトで分離感がある。
テンションが緩い・・・押弦が楽。サスティンが長い。
弦のゲージ
弦の太さを表すゲージ。
楽器店に必ず置いてある弦のアーニーボールで簡単にご説明します。
数字が弦の太さです。ちなみに10は0.01 inch = 0.254mm を表します。
(1 inch = 25.4 mm)
10-46は一番細い弦(1弦)が0.01インチ、一番太い弦(6弦)が0.046インチ
これを頭に入れて次からのスケールを読んでいただければイメージしやすいです。
2020年2月5日更新。
648mm(25.5 inch):ロングスケール(フェンダースケール)
648mmまたはUSA製だと 25.5″ や 25 1/2 inch (インチ)などとも表記されます。
ストラトやテレキャスターのスケールでフェンダースケールとも呼ばれます。ほとんどのダブルカッタウェイのギターに採用されており、最も多いスケールかもしれません。
おおよそのブランドのファクトリープリセット(工場出荷時)は09-42のゲージがセットしてあります。
ロングスケールに10-46の弦を張ると、タイトで芯のあるサウンドがより実感しやすいです。
628mm(24.75 inch):ミディアムスケール(ギブソンスケール)
628mmまたはUSA製だと 24.75″ や 24 3/4 inch(インチ)などとも表記されます。
レスポールやSGなどのギターに使われておりギブソンスケールとも呼ばれます。むしろギブソン系以外に採用されているのは結構珍しいです。
おおよそのブランドのファクトリープリセット(工場出荷時)は10-46のゲージがセットしてあります。
ミディアムスケールに09-42の弦を張ると、軽い力での押弦が実感できますが、強くピッキングする音程が乱れるなど、一概に弾きやすくなるというわけでもないのが、難しいところ。
代表的なエレキギターのスケールの紹介としてここにショートスケールが加えられて説明されるケースが多いと思いますが、先の2種類で一般的なエレキギターの7から8割程度があてはまると思います。
では以降それ以外のスケールをご紹介
610mm (24 inch) :ショートスケール
Fenderのムスタングやジャガーをはじめ、ミニギターの代表格Fernandesの ZO-3やピグノーズ(Pignose)スピーカー搭載ギターPGG-200もこのスケールです。
ショートスケールはかなり短いので通常のギターと同様に演奏したい際は最低でも10-46ゲージの弦をおすすめします。
10-46で、感覚的にはミディアムスケールに09-42を張ったテンション感です。
ちなみにZO-3専用弦なる (通常の弦よりも短い) ものも発売されていますが、通常のギター弦で問題ありません。ゲージも普通の10-46です。余った分は切ってしまえば良いだけです。
ZO-3使用者 = 親がギターを知らない子供や、ギターに詳しくない方も多いという想定をしたフェルナンデスの親切心(もしくは策略?)だと思われます。
635mm (25 inch):PRSスケール
フェンダースケールとギブソンスケールの中間の長さを採用したスケール。
PRSのCustom24や、日本のFreedom Custom Guitar ResearchのHydraというモデルで採用されています。
ミディアムスケールの演奏感と、ロングスケールのサウンドのメリットの両方を享受できるスケールとして支持されています。
特に日本人の体格にはフェンダースケールよりも、これがベストと考える方も多いようです。
わたしもベストとまでは言いませんが、速弾きもしやすい演奏感から、カッティングでもキレのあるサウンドが堪能できるスケールとして愛用しています。
673.5mm (26.5 inch):エクストラロングスケール
666mm(26.2 inch)スケール
ロングスケールよりさらに1インチ長いエクストラロングスケール。
またdragonflyなどではロングスケールより18mm長い 666mm(トリプルシックス)と呼ばれるスケールもあります。
10-46のゲージでもファクトリープリセットは全弦1音下げというダウンチューニング専用機として認知されています。
10-52などであればドロップBチューニングなどで7弦ギターの音域まで、6弦ギター演奏感で到達できるとして、ヘヴィなギタリストの支持を受けています。
dragonflyでも666ながら、レギュラーチューニングでタイトさを追求したものもありますが。
6弦開放のEよりも低い音程ではサウンドがくぐもったり、ピッチ(音程)が安定しないことが多く、スケールを長くすることでテンションを稼ぎ、音像をタイトにし、音程も安定させる狙いがあります。
音域がLow-Bまで到達する7弦ギターに採用されることもあります。
マルチスケール
ファンドフレット(Fanned Fret)とも呼ばれるフレットが斜めに打ってあるギターも最近人気です。
ブランドとしてはstrandbergやOrmsby Guitars、Strictly 7 Guitars などが有名でしょうか?
1弦から6弦(7弦や8弦ギターなら、その最低音弦まで)のスケールが、次第に長くなっています。
今までご説明した各スケールのメリットを1本のギターに落とし込んだ設計思想。
特にエクストラロングスケールなどで、低音弦をダウンチューニングすると1、2弦などでのリードフレーズ、特にチョーキングの際テンションがキツく大変!という悩みを解決してくれます。
それ以前に斜めのフレットは演奏しづらそうですが、慣れれば見た目以上に問題なさそうです。
strandbergは1弦 25 inch(PRSスケール)~ 6弦 25.5inch(フェンダースケール)と一般的なスケールの組み合わせで、ダウンチューニングをそこまで意識したわけではなく、人間工学に基づいた演奏性や、ピッチの安定性からテンションコードを美しく響かせる狙いなどがあるようです。
以上エレキギターの主なスケールをまとめてみました。
スペックの読み方を何となくでも掴んでいただければ幸いです。
ご自身が所有するギターを演奏する際はもちろん、他人のギターを触らせてもらう時や、お店での試奏の際も、そのギターがどんなスケールなのかを意識して演奏していくと自分の中での知識として定着していくと思います。