アコギ単板と合板の違い【見分け方】

 
単板と合板の特徴と音の違いは?

単板が必ず良い?

見分け方はある?

現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、アコースティックギターの単板と合板の違いについて解説します。

単板(ソリッド)とは

taylorguitars.jpより引用

重ね合わせていない板が単板です。

弦の振動が板に良く伝わり、しっかり響きます。

また弾きこむほどに音質は向上します。

この傾向はトップ材・バック材・サイド材が全て単板の、オール単板のギターはより顕著です。

合板(レイヤード/ラミネート/プライウッド)とは

(ほとんどが3枚の)板を貼り合わせた構造をしています。

構造上、単板よりも弦の振動が伝わらず鳴りは落ち着いています。

弾き込んでも音質の変化は乏しいといえます。

これらの理由は裏を返せば頑丈であるということです。

温度や湿度の変化にも強く、割れや反りのリスクが軽減されます。

木材自体の製造コストも低くなるので、ギター自体の価格も抑えられています。

ピースとの違い

たまに勘違いされる方がいらっしゃいますが、厚くなる方向に重ねるのが合板で、

横に接着する場合はピースで数えます。

2ピース

2ピースはブックマッチ(注:和製英語)とも呼ばれ、

1枚の板をスライスして横に合わせる、本を開いたような状態で

ほとんどのアコギのトップとバック材は2ピースです。

1ピースでギターを作るにも、大きな木材を入手することは困難ですし、音響特性や歪みに対する強度からも2ピースの方が適しています。

3ピース

3ピースで有名なのはMartinのD-35。むしろ現在はこれ以外で探すのが困難です。

1965年までマーティンの伝統的なギター作りとしては、ボディの裏板は2ピース構造だった。D-35は、D-28などに使用しているハカランダ材が、原産国ブラジルの原木丸太輸出制限で入手困難になったことが原因で生まれた3ピース・バックが特徴のモデルである。

https://www.martinclubjp.com/guitars/discontinued_models/D-35/より引用

この様に木材供給の観点から生まれた苦肉の策とも言えますが、

日本では70年代フォークシンガーに愛用者が多かったことから、3ピースのルックスに加え

サウンド的にもややソフト、マイルドになる傾向があり、それが歌の伴奏に最適だったということから人気がありました。

当時国産ブランドのヤマハ、モーリス、ヤイリも3ピースモデルを発売するなどコアなファンがいたりします。

単板と合板の見分け方

メーカーサイトやカタログで確認する。

日本語なら木材の名前の後に「単板」

英語なら木材の名前の前に「Solid」とあれば単板です。

トップ:シトカスプルース単板

Back:Solid Indian Rosewood

合板の場合も木材と一緒に「合板」、「Plywood」または「Layered」と記載があれば合板ですが、

むしろなにも書いていない場合は合板であることがほとんどです。

トップ:スプルース

Side:Layerd Sapele

Back:Mahogany

わざわざ合板と記載しないのは、製造者側が合板をデメリットとして捉えている、販売時にネガティブな印象を与えたくないといった思惑があるのか、、、楽器業界の闇のひとつです(笑)。

逆にテイラーなど、自信をもってそのメリットを認識しているブランドは、しっかり記載していますし製品自体にも好感が持てます。

見た目での見分け方

カタログやメーカーサイトが残っていない場合などは、実物を見て判断したいところですが、特にサイドバックの見分け方はちょっと難しいです。

トップ材はサウンドホールから木材の側面を見ます。

木目が裏までつながっているなら単板、

andertons.co.ukより引用

つながっておらず、他の板が張り合わせているなら合板です。

合板

サイドとバック材はサウンドホールから覗いて見える木目と、本体の表面から見た木目が一致していれば単板、そうでなければ合板です。

木材には厚みがあるので表裏で全く同じ木目ではありません。

特に特徴的な木目を探し(ローズウッドなら黒い縞の幅やうねり方など)、そこから判断するなど工夫が必要です。

たまに内側と外側で異なる木材を使っているものもあるので、そういったものならすぐにわかります。

まとめ

単板

・良く鳴る

・弾き込むほど音質が向上する

合板

・鳴りは控えめ

・外気の変化に強い

単板、合板の違い以外にも様々な要因からサウンドは形成されますので一概には言えませんが、

単板の方が良く鳴る、演奏の強弱への追従性が高いというのが一般論です。

事実20万円クラス以上のギターはほぼオール単板です。

しかし例外も存在し、中古品でも3桁万円は下らないアコースティックギタールシアーの巨匠Ervin Somogyiのギターでは、

サイドのみレイヤード構造を採用しているモデルも存在します。

ギターの構造を知り尽くした職人が、音質のためにレイヤードを選んでいるというのは大変興味深いですね。

そこまで行かなくとも例えばテイラーのメキシコ製モデルは、合板でも下手なオール単板ギターよりは音が良いという例もあり

結局はトータルバランスが重要、ということです。

結論、必要以上にこだわり過ぎたり、神経質になるよりも、

目の前のギターを弾いて自分が好きな音かどうかを聞き分けられる耳や判断力といった、自分の基準を持っておくことの方がよっぽど重要です。

Twitterで気軽に交流しましょう!