メリットとデメリットは?
正しいお手入れ、メンテナンス方法は?
という方のために、現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、ローステッドメイプルについて解説。
ローステッドメイプルとは
通常の木材を180-240℃の高温で加熱処理したメイプル材です。
加熱装置の中は無酸素状態のため燃えることはありません。
この熱処理により木材内部の水分がなくなり、樹脂・油分が結晶化します。
温度は加工業者によっても異なりますし、それにより仕上がりも変わるためローステッドの特徴が強いものと、そうでないものもあります。
サーモメイプルとも呼ばれます。
もともとはフィンランドで建築用に採用された技術ですが、その特性から楽器にも流用されるようになりました。
楽器様にローテッド加工されるものはメイプルの他、アコースティックギターのトップ材のスプルースなどもあります。
ローステッドメイプルの特徴
ヴィンテージライクなサウンドに変化
ハズレの材が淘汰される
強度・剛性が高い
水分が少なく、樹脂も結晶化することで木材自体が硬くなります。
そのためネックの反りはもちろん、ねじれなどネックの形状変化もしづらくなります。
反りはロッド調整で対応できますが、通常の調整では困難な波打ち・ねじれがしづらいという点は大きなメリット。
サドウスキーなどハイエンドブランドでは、フレイムメイプルは杢目が美しい一方、強度面においては不安が残るため採用していませんでした。
しかしこのロースト処理によりフィギュアドのメイプルでもネック材としての強度が確保できるようになりました。
ヴィンテージライクなサウンドに変化
ロースト後の状態は長年の経年変化のようでもあるため、”新品でもヴィンテージのような鳴り”という文言もよく使われます。
これはネックの振動が豊かになる=
サウンドは倍音豊かでオープンなサウンドになる
ということです。
後述のデメリットにもなる”好み”の部分ではあります。
ハズレの材が淘汰される
ネック材として好ましくない木材をロースト処理を施すと、この時点でねじれなどが発生します。
そういった材は当然製品には使われませんので、使用していくうちにネックに欠陥が出てくる確率もかなり下がります。
ローステッドメイプルのデメリット
色の変化
加工が困難
サウンドの変化
メリットにもあげたオープンな鳴り、いなたさともとれる様なサウンドは
ギターの特徴や好みによってはデメリットとなる可能性もあります。
ネックが良く振動するということは逆に言えば、弦振動のエネルギーがネックに取られるため、サスティンは減少します。
この特徴をどれくらい混ぜ合わせるか、という部分が重要なポイントになってきます。
メーカーによってローストのレシピも異なるため、サウンドにもかなり違いを感じます。
オーダーメイドなどでは、ボディ材やピックアップといったトータルバランスを誤ると、芯もないパキパキでサスティンのないサウンドになってしまう恐れがあります。
色の変化
加熱処理をするため、こげ茶に色が変化します。
見た目の問題ですがこれは好みでしょうか。
個人的にはXoticなどフレイムメイプルのローステッドネックは高級感もあって好きです。
加工が困難
製造時はクラフトマンが苦労する部分ではありますが、ユーザーにも注意が必要なポイントです。
水分を飛ばすと硬くなると同時に、もろくなるとも言えます。
具体的には木目に沿って割れやすいという点です。
普通に使っている分には問題ないのですが、例えばペグを交換するときにネジ穴をあけなおす工程で
ヒビが入る可能性が通常の材よりも高いです。
ローステッドメイプルのカスタムについてはリペアマンに依頼することをおすすめします。
ローステッドメイプルの手入れ方法
ローステッドメイプルネックは指板材を貼り合わせない1ピース、もしくは同じローステッドメイプル指板のものが多い印象です。
そしてそのネック、および指板材は、艶のないサテン仕上げですが通常のメイプルネック同様に塗装はされています。
そのため、指板オイルなどは不要です。
汚れが付いた場合は質の高いクロスで乾拭き、
それでもだめなら、ネック・指板いずれも
サテン仕上げ塗装に対応した研磨剤を含まないポリッシュを使用してください。
詳細はこちらの記事をご覧ください。
ローズウッド指板などオイルが必要な指板の場合はこちらの記事もご覧ください。