●S2は他のPRSとどこが違うの?
という方々のために、今回はPRS S2 Custom 24を楽器屋店員Yoshがガチレビュー!
お求めやすくもUSA製なPaul Reed SmithのS2気になる疑問にすべてお答えしています。
PRS S2シリーズの特徴
Paul Reed Smith(ポール・リード・スミス、以下PRS)には大きく4つのグレードがあります。
SE | インドネシア製(2019年途中より韓国製から変更)。初心者でも手の届くPRSクオリティがコンセプト。Student Editionの略。 |
S2 | USA製。生産効率を上げ、Coreの半分以下の価格を実現。 |
Core | USA製。PRSの標準グレードにして、妥協を許さない高品質モデル。 |
Private Stock | USA製。カスタムショップの位置づけ。100万円以上は当たり前の最高級機種。 |
今回はS2について深堀りします。
PRSはアメリカMaryland(メリーランド)州のStevensville(スティーヴンスビル)に工場を構えます。
S2の名前はこのスティーヴンスビル工場の第2製造ラインに由来します。
S2が安い理由
ギターのコストは
●製造に必要な時間と職人の技術
により変動します。
S2はどの部分でCoreモデルと同じメリーランド工場ながらコストを下げているか解説します。
木材のグレード
使われている木材自体はCoreモデルとほぼ同等のグレードのものを使用しています。
指板のローズウッドは無塗装なのでわかりやすいですが、低価格帯のギターでは扱われない油分のある艶っぽい材をしっかり使っていることがわかります。
ボディ
ボディトップ材はコアモデルのノーマルトップ程度のフィギュアドメイプルが採用されています。
ルックスのために希少な木材を使うことではなく、
”サウンド”のために必要なメイプル材を使っているということです。
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またトップの形状がコアモデルのアーチに対し、
S2はフラットトップに角を落としたベベルドトップを施しています。ウッドバインディングもありません。
この違いにより木材を限りなく無駄なく使えること、
加工の時間が短縮されることでCoreモデルよりもコスト減が実現しています。
逆にアーチトップは希少な分厚いメイプル材をカーブの分だけ削るかなり贅沢な使い方なんです。
ネック
こちらはコアモデルとほぼ同等のグレード。
マホガニーですがサウンドの要となる柾目材を使っている点もコアモデルと同じです。
ただしヘッド部においては木材をつぎ足すスカーフジョイントが採用されており、
ジョイント部のヒール部の厚みもつぎ足されています。
これによりコアモデルの1ピースネックで使用する1本分の木材から
S2では2本分のネックを使うことができます。
パーツ
パーツについては韓国製のパーツを採用しています。
アーム、ブリッジはSEと同じものを使用しており、
ブリッジの構造は特許取得のPRSオリジナルですが、
韓国製は溶かした金属を型に流し込んで作り、コアモデルではブラスをブロックから削り出して作ります。 後述のサウンドの違いにも影響してきます。
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ペグは韓国製ですがSEとは異なり、チューニングが安定し弦交換も容易なロック式を採用。
クローズドバックながらも、ブラス製のストリングポストを採用し軽量に仕上げたPRS Low Mass Tunersは
ペグがサウンドに与える影響を考慮し、専用に開発されたものです。
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ピックアップは時期により搭載されているモデルが異なりますがどちらも韓国製です。
初期S2はSEのものとは異なり、S2 HFS TrebleとS2 Vintage Bassという専用ピックアップでした。
現在は85/15 “S”というコアモデルに標準搭載される85/15の廉価モデル。
これはSEにも搭載されているモデルで、S2のピックアップのグレードが下がったと捉えるか、SEのピックアップグレードが上がったと捉えるかはお任せします。。。
コアモデルもハイパワーなHSF/Vintage Bassから85/15に変わったことをから
個人的にはPRSが幅広いジャンルで使えるバランスの良いピックアップを使うよう方針転換したと捉えています。
ナット及びジャック、コントロールノブはコアモデルと同じです。
S2 Custom24 サウンド
PRSはGibsonとFenderの良いとこ取りなんて評されますが、
私はどちらの音も出せるという認識ではなく、
どちらの特徴も有している中庸なトーン=幅広く使えるという認識です。
メイプル+マホガニーボディとマホガニーネック+ローズ指板というGibsonの系譜と
トレモロユニットによるスプリングがサウンドに与える影響とGibsonより長いスケールを持つFenderの系譜という具合です。
このS2は本家コアモデル同様この特徴を備えており、
PRSならではの甘いや太いで終わらない、スプリングのリバーブ感や抜けの良さがある万能なサウンド。
一応コイルタップも可能で、シングルコイルやハーフトーンも出せますが、やや線が細いのは否めません。
クリアなアルペジオやコードストローク、
ソウルやポップスでのバッキングのカッティングにはバンドアンサンブルでの混ざりも良さそうですが、
SRVやレッチリのような太いシングルサウンドは難しいです。
とは言え空間系エフェクターをかけたクリアなクリーンや、クランチでのブルース、
ディストーションで歪ませれば、音圧のある昨今のラウドロックやメタルなどの
ハムバッカーサウンドはPRSならではの扱いやすさがあります。
コアモデルと比較するとサウンドの系統は同じですが、
コアモデルはもっと倍音豊かでレンジの広さがあり、
S2はシンプルでたくましいという感じですね。もちろん倍音感がまったくないわけではありませんので
これらを補いたいならこまめな弦交換をして使いたいですね。
S2 Custom24 演奏性
流石はUSA製、ナットやフレットの職人技にコアモデルとの違いはほぼ感じません。
1弦12フレットで1.0mm程度のセッティングも可能。
ネックシェイプはPattern Regularのみ、ナット幅は1 21/32″(約42mm)と厚くも薄くもない標準的な形で違和感がある人の方が少ないでしょう。
言わずもがなスケールは25インチ。サウンドにハリが出てチョーキングはきつくなく、音程も安定する万能スケールです。
また、コアモデルに勝る点と言って良いのが、ボディトップのベベルド加工が与える右腕への影響です。
メタリカ大好きな私の様にブリッジミュートでダウンピッキングを刻むようなスタイルはコアモデルのボディのエッジが長時間の演奏には不向きです。
ベベルドカットはエルボーコンターの役割も果たすため、
このダウンピッキングのみならず右腕への負担を減らします。
SE Custom24 との違いを比較
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まずは主要3グレードの違いの比較から。コアはバリエーションが多いためスタンダードな仕様を記載しています。
SE Custom24 | S2 Custom24 | Custom24 | |
実売価格 | 約12万円 | 約30万円 | 約60万円 |
生産国 | インドネシア | USA | USA |
ネック材 | メイプル | マホガニー | マホガニー |
ボディトップ材 | フレイムべニア+メイプル | フィギュアドメイプル | フィギュアドメイプル |
ボディトップカーブ | ベベルド | ベベルド | アーチ |
ポジションマーク | パール | 樹脂 | アヴァロン |
ピックアップ | 85/15 “S” 韓国製 | 85/15 “S” 韓国製 | 85/15 自社USA製 |
コントロールノブ | 汎用品スピードノブ | PRSオリジナル | PRSオリジナル |
バックパネル取付 | 落とし込み | 落とし込み無し | 落とし込み |
こうやって見るとS2はやはりその中間ではあるのですが、
注目すべきは、主にルックス面においてのコストダウンを図っているところ。
具体的にはポジションマークの素材、バックパネルの取り付け方です。SEの方が本家を踏襲しているところが面白いですね。
極めつけはSEは非常に薄い杢目のべニアをメイプルの上に貼り付けることでルックスの向上を図っているのに対し、
S2はフィギュアドながらも派手な杢目のないメイプルを採用しているところです。
パッと見のルックス面においてはSEの方がコアモデルに近いのです。
一方サウンドに大きな影響を及ぼすネック材にSEはメイプルを使用しています。
これはアーミングにより弦のテンションが変化しても耐えうる強度を持つ
柾目のマホガニーを安価に大量に確保できないことを意味しています。
またナットやフレットなどスペック表だけではわからない部分の仕上げも
USAの職人の方が技術が高く、1本1本にあてる時間も多いのでしょう、弾きやすさにもかかわる細部の仕上げはS2に軍配が上がります。
つまりS2は ” PRS直系のサウンドと楽器としてのクオリティ”のみを最優先とし、徹底的なコストダウンの積み重ねでロープライスを実現した、プレイヤーフレンドリーなシリーズと言えます。
S2 Custom 24 評価
特にネット上ではネガティブな評価が散見されています。
ブルースもロックもファンクもできますが、
オールドスクールまでは行かない、クリアで優等生なサウンド、この中庸さこそが突出したサウンドキャラクターではないため、
良く言えばクセが無い、悪く言えば中途半端という印象が賛否両論ある理由だと私は考えています。
ラウドロックなどモダンなサウンドが欲しいならこの点はむしろメリットです。
しかしピックアップの違いなどからコアモデルにはある豊かな倍音感など、
PRSのすべてを体現しているわけではないというところはあります。
またPRSファンは高級志向のユーザーが多いため、
アーチを描かないボディトップや、トップ材のグレードなどに厳しいこともネガティブな意見が多い理由だと思います。
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PRS印のバードインレイも貝ではなく樹脂製なのも、ルックスの差に拍車をかけています。。。
まとめ
主観ですがコアモデルを10点満点とすると、S2は7点、SEは5点という印象。
価格が違うから当たり前です。
この価格でこのクオリティの差ならば、むしろ褒められるべきです。
ボディシェイプやカラー、バーズインレイなどのルックスが好き、
スーパーストラトとは違った多様性がある、かつ太目のサウンドが欲しい、
という方にS2はおすすめです。
もう少し買いやすいPRSを・・・という方はこちらの記事をご覧ください。
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