●凝った使い方はしないが、基本的なエフェクターは一通り使いたい
●エフェクトボードを組みたいけど、予算が多くない
という人のために、現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、2023年7月発売のマルチエフェクターBOSS ME-90を徹底解説。
旧機種ME-80からパワーアップした点や、同じくBOSSのマルチGX-100との違いを比較します。
従来のMEシリーズ同様、コンパクトエフェクター派にも使いやすい操作性を持ったマルチエフェクター。
上位機種譲りのAIRDプリアンプなど、音質面はかなり向上しています。
GX-100のような凝った音作りができませんが、その分シンプルでわかりやすく、ME-90だけでも基本的な音作りは網羅できます。
ゼロから様々なエフェクターを揃えるよりも低予算ながら、100種類近くのエフェクターが使えるので、はじめてのマルチエフェクターとしてや、最近のマルチエフェクターの操作が面倒なベテランギタリストにおすすめ。
BOSS ME-90特徴
- 昔ながらの直感操作
- 最上位機種GT-1000譲りのAIRDプリアンプ11種類
- 60種類以上のエフェクト
- 外部エフェクト接続可能なセンドリターン端子
- 単三電池もしくはアダプター駆動可能
- 専用アプリで音色追加、編集可能
昔ながらの直感操作
従来のMEシリーズ同様に、マルチエフェクターですが、コンパクトエフェクターと同じ操作性で音作りが可能です。
ノブがたくさんあって圧倒されるかもしれませんが、「プリアンプ」「コンプ/FX1」「歪み」「モジュレーション」「ディレイ」「リバーブ」「EQ/FX2」とそれぞれのエフェクト毎につまみがあるので、複雑なボタン操作不要で操作できます。
最上位機種GT-1000譲りのAIRDプリアンプ11種類
BOSSのマルチエフェクターの最上位機種GT-1000で導入されている、プロクオリティのAIRDプリアンプを搭載。
クリーンからハイゲインディストーションまで、11種類のアンプを採用しており、あらゆるジャンルに対応可能です。
以下プリアンプのリストです。
※は専用アプリで[RECTI STACK]と入替可能。
プリアンプ名 | 説明 |
---|---|
NATURAL | ナチュラルなクリーン |
X-CRUNCH | MDP技術を使ったクランチ |
X-HI GAIN | MDP技術を使ったハイゲイン |
MAXIMUM | ビンテージMarshallのハイゲインmod |
JUGGERNAUT | メタル用大型スタックハイゲイン |
X-MODDED | MDP技術を使ったモダンハイゲイン |
TWIN COMBO | Fender Twin Reverb モデリング |
TWEED COMBO | Fender Bassman モデリング |
DIAMOND | VOX AC30 モデリング |
BRIT STACK | Marshall 1959 モデリング |
RECTI STACK | Mesa Boogie Dual Rectifier モデリング |
※TRANSPARENT | アコギに最適なフラットなアンプ |
※BOUTIQUE | ニュアンスに敏感なコンボアンプのクランチ |
※SUPREME | ニュアンスに敏感なスタックアンプのクランチ |
※JC-120 | Roland JC-120 モデリング |
※DELUXE COMBO | Fender Deluxe Reverb モデリング |
60種類のエフェクト
スタンダードなエフェクターは一通り内蔵されており、普通に使う分には問題ないでしょう。
シマーディレイなど現代的なエフェクターや、最大38秒のルーパーも搭載。
以下エフェクトリストです。※は専用アプリで入替可能
COMP/FX1(コンプレッサー/エフェクト1)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
COMP | コンプレッサー |
T.WAH UP | 高周波数帯域にかかるオートワウ |
SLOW GEAR | ボリューム奏法風効果 |
DEFRETTER | フレットレスギター風効果 |
OCTAVE | オクターバー |
HUMANIZER | ボコーダー風効果 |
FEEDBACKER | ペダルを踏んでいる間フィードバック風光化 |
AC SIM | エレキの音がアコギの音に変わる |
SOLO | ソロ演奏に最適なサウンドに |
TUNE DOWN | ダウンチューニング |
S-BEND | ペダルを踏んでいる間に、音程を上下できる |
※D-COMP | MXR ダイナコンプのモデリング |
※RING MOD | リングシミュレーター |
※POLY OCTAVE | 和音対応可能なオクターバー |
※T.WAH DOWN | 低周波数帯域にかかるオートワウ |
※Single > Hum | シングルコイルの音をハムバッカー風へ変化 |
※Hum > Single | ハムバッカーの音をシングルコイル風へ変化 |
OD/DS(オーバードライブ/ディストーション)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
BOOST | ブースター |
OVERDRIVE | BOSS SD-1モデリング |
T-SCREAM | Ibanez TS-808 モデリング |
CENTA OD | KLON CENTAUR モデリング |
BLUES OD | BOSS BD-2 Blues Driver モデリング |
DISTORTION | BOSS DS-1 モデリング |
TURBO DS | BOSS DS-2モデリング |
RAT DS | Proco RATモデリング |
METAL DS | BOSS MT-2 Metal Zone モデリング |
CORE | BOSS ML-2 Metal Core モデリング |
MUFF FUZZ | Electro-Harmonix Big Muff モデリング |
※CLEAN BOOST | クリーンブースター |
※TREBLE BOOST | トレブルブースター |
※OD-1 | BOSS OD-1 モデリング |
※TURBO OD | BOSS OD-2 モデリング |
※GUV DS | Marshall Guv ‘Nor |
※’60S FUZZ | Fuzz Face |
※OCT FUZZ | オクターブファズ |
MOD(モジュレーション)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
PHASER | フェイザー |
FLANGER | フランジャー |
TREMOLO | トレモロ |
CHORUS | コーラス |
VIBRATO | ビブラート |
PITCH SHIFT | ピッチシフター |
HARMONIST | 単音を弾きツインギター風のハモリを再現 |
ROTARY | 回転スピーカー風効果 |
UNI-V | Uni-Vibeのモデリング |
DELAY | ディレイ |
OVERTONE | MDP技術で新たな倍音を付加 |
※SCRIPT PHASER | MXR Phase 90 モデリング |
※STEREO CHORUS | ステレオコーラス |
※CE-1 CHORUS | BOSS CE-1のモデリング |
※AUTO WAH | オートワウ |
DELAY(ディレイ)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
STANDARD | ディレイタイム10〜800msecのディレイ |
ANALOG | マイルドなアナログディレイ風 |
TAPE | ゆらぎのあるテープエコー風 |
WARM | 温かみのあるディレイ |
MODULATE | 揺らぎを加えたディレイ |
REVERSE | 逆再生ディレイ |
TEMPO | タップテンポに対応するディレイ |
TAPE ECHO | MDP技術により、ピッキングの強弱で残響が変化するディレイ |
SHIMMER | ピッチを変化させた音を混ぜたディレイ |
PHRASE LOOP | 最大38秒のルーパー |
+ REVERB | リバーブを組み合わせたディレイ |
※CHO+DELAY | コーラスを組み合わせたディレイ |
※WARP | ペダルを踏んでいる間、幻想的な音を作り出す |
※TWIST | ペダルを踏んでいる間、回転感ある |
※GLITCH | ペダルを踏んでいる間、機関銃のようなディレイ音になります |
NS(ノイズサプレッサー)
EQ/FX2(イコライザー/エフェクト2)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
PHASER | フェイザー |
TREM/PAN | トレモロ |
BOOST | ブースター |
DELAY | ディレイ |
CHORUS | コーラス |
EQ | 3バンドイコライザー |
※FLANGER | フランジャー |
※VIBRATO | ビブラート |
※PITCH SHIFT | ピッチシフター |
※HARMONIST | 単音を弾きツインギター風のハモリを再現 |
※ROTARY | 回転スピーカー風効果 |
※UNI-V | Uni-Vibeのモデリング |
※OVERTONE | MDP技術で新たな倍音を付加 |
REVERB(リバーブ)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
ROOM | ルームリバーブ |
HALL | ホールリバーブ |
SPRING | スプリングリバーブ |
PEDAL FX(ペダル・エフェクト)
エフェクト名 | 説明 |
---|---|
WAH | ワウ |
VOICE | ボコーダー風 |
+1 OCT | ワーミー(+1オクターブ) |
+2 OCT | ワーミー(+2オクターブ) |
-1 OCT | ワーミー(-1オクターブ) |
-2 OCT | ワーミー(-2オクターブ) |
FREEZE | ペダルを踏み込むと、ギター音を持続させます |
OSC DELAY | ディレイの発振状態を起こせます |
OD/DS | OD/DS使用時のDRIVEをコントロール |
MOD RATE | MOD使用時にRATEをコントロール |
DELAY LEVEL | DELAY使用時にディレイレベルをコントロール |
外部エフェクト接続可能なセンドリターン端子
本体のみでも豊富なエフェクターを使用可能ですが、歪みエフェクターはお気に入りのものを使いたい、という人も多いでしょう。
ME-90ではセンドリターン端子を備えており、歪みペダルに最適なプリアンプの前段、もしくはディレイペダルに最適なプリアンプ後段に、外部エフェクターをかけることができます。
単三電池もしくはアダプター駆動可能
アダプターの他、電池でも駆動するので、電源が無い環境や、ノイズ対策、転換対策にもなります。
アルカリ単三電池4本で、約6.5時間駆動します。
専用アプリで音色追加、編集可能
PCやスマホと接続して音色の編集や追加が可能です。
プロミュージシャンが作成した音色パッチもダウンロードできます。
PCと接続すればUSBオーディオインターフェースとしても機能します。
外部IRデータも3つまで入れることができます。
メリット
- コンパクト・エフェクター感覚で操作できる
- 8つのフットスイッチで、好みの音色切替モードが使える
- ヘッドフォン端子搭載で、自宅練習にも使える
- どんなアンプにも最適なサウンドに
コンパクト・エフェクター感覚で操作できる
BOSSのMEシリーズが、他社のマルチエフェクターと異なる最も特徴的な部分です。
複数のコンパクトエフェクターを1台にまとめたようなレイアウトなので、その場ですぐに音色調整ができます。
ボタンを押して画面のページを切り替えながら操作する、他のマルチエフェクターの操作が苦手な人でも、簡単に操作できます。
8つのフットスイッチで、好みの音色切替モードが使える
フットスイッチが8個もあります。
作成したパッチでエフェクトの内容を一気に切り替えるMEMORYモードと、コンパクトエフェクター並べたような感覚でそれぞれのエフェクターをON/OFFするMANUALモードから選べます。
スイッチ横にあるLEDが各エフェクトと一致した色を表すので、視覚的にもわかりやすいです。
ヘッドフォン端子搭載で、自宅練習にも使える
本体背面にはヘッドフォン用端子もあり、自宅練習にも使えます。
IRもついているので、プリアンプと組み合わせてギターらしい音色をヘッドフォンでも楽しめます。
どんなアンプでも最適なサウンドに
背面スイッチで、ギターアンプに接続する際とライン出力する際それぞれに最適なサウンドになるよう切り替えができます。
さらにギターアンプに接続する際には下記の設定を行えば、使用するアンプに最適なサウンドに整えてくれます。
使用するアンプによって起こるネガティブなサウンドの変化を軽減してくれるので、AIRDアンプを使用する際もスムーズに音作りが可能です。
表示 | 説明 |
---|---|
1:TUBE COMBO 212 INPUT | 12インチ2発の真空管コンボアンプのインプットに接続する際に最適 |
2:TUBE COMBO 212 RETURN | 12インチ2発の真空管コンボアンプのリターンに接続する際に最適 |
3:TUBE COMBO 112 INPUT | 12インチ1発の真空管コンボアンプのインプットに接続する際に最適 |
4:TUBE COMBO 112 RETURN | 12インチ1発の真空管コンボアンプのリターンに接続する際に最適 |
5:TUBE STACK 412 INPUT | 12インチ4発の真空管スタックアンプのインプットに接続する際に最適 |
6:TUBE STACK 412 RETURN | 12インチ4発の真空管スタックアンプのリターンに接続する際に最適 |
7:JC-120 INPUT | ROLAND JC-120のインプットに接続する際に最適 |
8:JC-120 RETURN | ROLAND JC-120のリターンに接続する際に最適 |
9:KATANA-100/212 INPUT | BOSS KATANA-100/212のインプットに接続する際に最適 |
10:KATANA-100/212 RETURN | BOSS KATANA-100/212のリターンに接続する際に最適 |
11:KATANA-100 INPUT | BOSS KATANA-100のインプットに接続する際に最適 |
12:KATANA-100 RETURN | BOSS KATANA-100のリターンに接続する際に最適 |
デメリット
- ディスプレイが小さく不便
- 詳細な音作りができない
- Bluetooth接続は別売アダプターが必要
ディスプレイが小さく不便
ディスプレイは、ほぼ数字を表示するだけです。
チューナー機能がありますが、普通のチューナーより見づらいでしょう。
また、パッチを切り替えた際の、各エフェクトのパラメータがすぐにわからないというデメリットもあります。
詳細な音作りができない
直感操作ができる一方、つまみの数が限られているため、エフェクトのパラメータが少ないです。
またエフェクトの接続順は固定で変更できません。
基本的な音作りには問題ないので、この点が気になる上級者のユーザーは、もっと上のグレードのものが良いでしょう。
Bluetooth接続は別売アダプターが必要
本体のほか、スマホアプリで音作り可能ですが、Bluetoothで接続する際には別売りのアダプターが必要です。
コストを抑えるためのオプションでしょう。
旧機種ME-80からの進化点
前モデルME-80との仕様を比較します。
仕様 | ME-90 | ME-80 |
---|---|---|
発売日 | 2023年7月 | 2014年1月 |
サンプリング周波数、AD/DA変換 | 48kHz, 24-bit | 44.1kHz, 24-bit |
プリアンプ | AIRD:11種類 | COSM:9種類 |
エフェクトタイプ | 97種類 | 62種類 |
LEDカラー | あり | なし |
センドリターン端子 | あり | なし |
AUX IN端子 | なし | あり |
電池駆動 | 単三電池4本:約6.5時間 | 単三電池6本:約7時間 |
サイズ | 443 x 220 x 67 mm | 447 x 231 x 70 mm |
重量 | 2.9kg | 3.6kg |
主に異なる仕様を比較しました。正当進化と言える内容ですね。
音質面においては、サンプリング周波数と、上位機種のアルゴリズム(AIRD)を採用していることから、向上しているといえるでしょう。
中身はデジタルエフェクターなので、解像度が低い旧機種の音の方が良いと思う人は少ないんじゃないでしょうか。
また、エフェクターの種類もバリエーションが増えています。
フットスイッチやエフェクト部分のLEDに色がついたことで、視認性も向上しています。
外部エフェクターを接続できるセンドリターン端子も追加されていますが、外部音源入力のAUX INが廃止されています。
重量も軽くなったことで持ち運びにも便利になっていますね。
ME-90とGX-100の違い比較
BOSSのもう一つのミドルクラスマルチエフェクター、GX-100との違いも比較してみます。
仕様 | ME-90 | GX-100 |
---|---|---|
発売日 | 2023年7月 | 2022年3月 |
市場相場価格 | 44,000円 | 69,850円 |
サンプリング周波数、AD/DA変換 | 48kHz, 24-bit | 48kHz, 24-bit |
プリアンプ | AIRD:11種類 | AIRD:23種類 |
エフェクトタイプ | 97種類 | 154種類 |
最大同時使用エフェクト | 10 | 18 |
ディスプレイ | 数字2桁LED | カラーグラフィックLCD(480×272ドット)タッチ・スクリーン付 |
フットスイッチ数 | 8 | 8 |
センドリターン端子 | あり | あり |
電池駆動 | 単三電池4本:約6.5時間 | 不可 |
サイズ | 443 x 220 x 67 mm | 460 x 193 x 73 mm |
重量 | 2.9kg | 3.5kg |
GX-100の方が約2.5万円高いだけあって、アンプ・エフェクトの豊富さ、各種パラメータの多さ、同時使用エフェクトの自由度など、緻密で専門的なサウンドメイクにおいてはGX-100が圧倒的。
操作においては、一般的なマルチエフェクターのボタンとつまみに加えて、タッチディスプレイを採用した操作も可能です。
音質にこだわる、マルチエフェクターならではの音作りをしたいギタリストはGX-100の方がおすすめです。
・BOSS GT-1で物足りなくなってきた・10万円以下の良いマルチエフェクターを探している・GX-100とGT-1000の違いと選び方は? という人にのために現役楽器屋店員のyosh(@yoshguitar[…]
7月29日発売予定・予約受付中
一方、ME-90はシリーズに共通している、シンプルな操作、コンパクト・エフェクターを組み合わせた基本的な使い方で十分なライトユーザーに向いています。
その上で、シリーズ最高の音質を持っていると言えるでしょう。
マルチエフェクターに興味が無いユーザーでも扱いやすく、ゼロからエフェクターボードを作ろうか考えている人にも検討してほしい1台です。
44,000円でエフェクターボードを作ろうとしても、パワーサプライやパッチケーブルも揃えるとなると、
- パワーサプライ:1〜2万円
- エフェクター1台:1〜2万円
- パッチケーブル1本:2〜3千円
くらいなので、実質3台くらいしかエフェクターが買えないです。
まだ、どのエフェクターが必要か?どのエフェクターが自分の好みかわからない人で、他のマルチは操作方法が理解できない、という人におすすめなのがME-90です。
2023年7月29日発売予定で、現在全国の楽器店で予約受付中です。BOSS製品は初回台数が少なく、売り切れるとしばらく入荷が無い可能性があるため、確実に入手したいなら予約がおすすめです。
●凝ったエフェクターの使い方はしない
●ゼロからエフェクトボードを作ろうか悩んでいる