Fender Hybrid II Jazzmaster
形だけでなくジャズマスター本来のサウンドが欲しい
ジャズマスターの弱点を改善するために改造するのは面倒
という人にぴったりの機種が Fender Hybrid II Jazzmasterです。
スペック
ボディ | アルダー |
ネック | メイプル |
ネックシェイプ | モダンC |
スケール | 25.5″(648mm) |
指板 | ローズウッドorメイプル |
指板ラディアス | 9.5″(241mm) |
フレット | 22, ナロートール |
ナット | 牛骨, 1.650″(42mm) |
ピックアップ | Hybrid II Custom Voiced Single Coil Jazzmaster |
電装パーツ | CTSポット、オレンジドロップ、Pure Tone Jack |
ブリッジ | フローティングトレモロ |
サドル | ムスタングバレル |
ペグ | ロック式ヴィンテージスタイル |
ケース | ソフトケース |
特徴/ジャズマスターサウンドを損なわず弱点を改善
フロントピックアップは低域が豊かでメロウ、
リアピックアップは太さと輪郭を兼ね備え、
ミックスポジションではブライトかつ艶っぽい。。。
というジャズマスターならではのサウンドが作られる要因は大きく3つ。
・独自構造のフローティングトレモロ
・ジャズマスターのために開発された専用ピックアップ
ジャズマスターならではのサウンドが欲しいなら、これらのスペックを持つモデルである必要があります。
ルックスだけ踏襲したモデルはあらゆるブランドから発売されていますが、この条件を満たしているモデルは意外と少ないです。
特徴①:ブリッジにかかるテンションが緩い
弦を裏通しするストラトやテレキャスと違い、ブリッジから離れたところからボディ表面で弦を通すため、
サドルで曲がる弦の角度が浅くなるので、弦がサドルを押さえつけるテンションが弱くなっています。
そのため弦の響きが倍音豊かに、独特のサウンドを生み出します。
ただし、これがジャズマスターの弱点とも言われており、
サドルにかかるテンションが弱いため、従来のイモネジ型サドルだと、ピッキングした際に弦がずれてしまう弦落ちが発生しやすくなります。
LUNA SEAのINORAN氏をはじめ、BUZZ STOP BARというパーツを後から取り付ける人もいます。
これは確かに弦落ちを克服しますが同時にジャズマスターらしい響きを失ってしまいます。
そこでもうひとつポピュラーな改造方法はサドルを、ムスタングと同様のバレル型サドルに交換する方法です。
これにより弦落ちを防ぎ、かつブリッジへのテンション感を変えないことで、
ジャズマスターのサウンドの特徴を殺さないベストな対策方法となっています。
Hybrid IIはジャズマスターの弱点と言える弦落ちを、後者のムスタングサドルを最初から使用することで完全に克服、かつ真のジャズマスターの鳴りを獲得しています。
特徴②:独自構造のフローティングトレモロ
トレモロの構造もまたジャズマスターならではの構造です。
ストラトはボディの裏側にスプリングが仕込んでありますが、
ジャズマスターはボディ表側の中にストラトよりも短いスプリングが仕込まれています。
このトレモロの構造もギターの鳴り・キャラクターを決定づける要因を大きく担っています。
またアーム時の音程の可変域はストラトに及びませんが、揺らす用途なら滑らかなビブラートを可能にしています。
特徴③:ジャズマスターのために開発された専用ピックアップ
ストラトでもテレキャスでも、そしてギブソンP-90とも異なるジャズマスターのピックアップ。
シングルコイルではありますがその独特の構造により、
低域が豊かなメロウさと、シングルコイルならではの歯切れも兼ね備えたサウンドになっています。
プロト機が開発されていた1957年当時は、その名の通りジャズプレイヤーに向けたモデルでしたが、
90年代以降オルタナロックで聞かれる太くも荒々しい直情的なサウンドであったり、
今やポップにも使われるようなクリーン~クランチでの独特で艶っぽいミックスポジションは絶品。
Hybrid IIでは本シリーズのために新たに開発されたピックアップを搭載。
ヴィンテージタイプよりも程良いパワー感はありつつも、潰れずクリアなサウンドで、エフェクターとの相性も良いサウンドに仕上がっています。
デメリット:ピックアップセレクターの位置が特殊
従来のプリセットコントロール(リズムサーキットコントロール)の位置に、
トグルスイッチのピックアップセレクターがあります。
これまでも本家フェンダー製でも、操作性やコスト面などから搭載されていないモデルも珍しくはありませんが、
ピックアップセレクターは従来通り1弦側が普通でした。
Hybrid IIではなぜか6弦側、いわゆるレスポールやテレキャスターデラックスと同じ位置になっています。
個人的には自分のテンションが上がり過ぎてしまうと、ピッキング時に誤って触れて意図せず切り替わってしまう経験があるのでちょっとマイナスに感じます。
もしかしたら後からプリセットコントロールを付けたいという人のためにボディにザグリを入れてあるのかとも邪推していまいますが、真意は不明です。
まぁセレクターがこの場所でも、普通に弾いている分には気にし過ぎるほどではないとは思います。
10万円台前後のFender Jazzmasterとの比較
Hybrid II | Player | Traditional | Vintera | |
生産国 | 日本 | メキシコ | 日本 | メキシコ |
ボディ | アルダー | アルダー | バスウッド | アルダー |
指板 | メイプル or ローズウッド | パーフェロー | ローズウッド | パーフェロー |
指板ラディアス | 9.5″ | 9.5″ | 9.5″ | 7.25″ |
フレット数 | 22 | 22 | 21 | 21 |
フレットサイズ | ナロートール | ミディアムジャンボ | ヴィンテージ | ヴィンテージ |
リズムサーキットコントロール | なし | なし | あり | あり |
サドル | ムスタングバレル | ムスタングバレル | イモネジ型 | イモネジ型 |
ピックアップ | Hybrid II Custom Voiced Single Coil Jazzmaster | Player Series Alnico 2 Humbucking | Vintage-Style Single-Coil Jazzmaster | Vintage-Style ’60s Single-Coil Jazzmaster |
市場相場価格(税込) | 123,750円 | 88,000円 | 108,900円 | 134,200円 |
生産国
現在フェンダーで生産されている10万円台前後のジャズマスターは4機種。
日本とメキシコで各2機種ずつです。
日本製も本家フェンダーミュージックが監修するようになってから
USA製と同様の材木商からの木材を使用したり、USAのボディデザインを精密に踏襲したり、
フェンダージャパン期よりもクオリティは向上したことで、メキシコ製よりも若干高くはなっています。
しかしナットやフレットなど細部の仕上げは、日本製の方が丁寧です。
さらにHybrid IIは同じ日本製のTraditionalよりもネックのエッジも丸みがついているので、手に馴染む印象です。
木材:ボディ材と指板材
ボディ材はトラディショナルシリーズのみバスウッド。
その他は正統派でアルダーを採用しています。
指板材はメキシコ製はパーフェローを採用しています。
パーフェローは硬質でややブライトなサウンドが特徴です。
つまり、伝統的なジャズマスターと同様の木材の組み合わせ(アルダーボディ、ローズウッド指板)を用いて、
ジャズマスターらしいトーンが得られるのはHybrid IIのみです。
とは言え、Hybrid IIのみメイプル指板もラインナップされており、
ローズウッド指板のものよりガッツのある感じのサウンドになっています。
演奏性:フレットと指板ラディアス
一般的に弦高が低めの方が弦を押さえやすいと感じる人が多いと思います。
指板ラディアスはVinteraの7.25″がヴィンテージと同じですが、旧フェンダージャパン同様に、弦高を下げるとチョーキング時に音詰まりが発生しやすくなります。
フレットは高さがあると、弦との距離が近くなります。
ヴィンテージタイプのフレットは低めで細いサイズ、
ナロートールとミディアムジャンボは幅が違いますが、高さがあるフレットです。
よって弦高が下げやすく、弾きやすいのはHybrid IIとPlayerと言えるでしょう。
リズムサーキットコントロール
Hybrid IIとPlayerにはこのコントロールがありません。
これはあらかじめホイールコントロールで設定したヴォリュームとトーンに、
スイッチひとつで強制的にフロントPUを鳴らすコントロールです。
が、実際にこだわって活用している人はどれくらいいるかなという感じ。
スライドスイッチなので演奏中に切り替えるにも手間ですし。
逆に無い方が無駄な回路を通らない分、音抜けは良くなります。
あった方がメカっぽくてカッコいい、という人もいますね。
サドル
伝統的なイモネジタイプのサドルなのはTraditionalとVintera。
しかしピッキング時に弦がずれてしまう可能性がある、というほかのギターではありえない悩みを抱えてしまいます。
前述の特徴のとおり、これを嫌がりムスタングで使われるバレルサドルに交換するユーザーも少なくありません。
サウンドを損なわず弦落ちも解消できるそれが最初から使われているHybrid II、マニアも納得のスペックです。
ピックアップ
全機種それぞれオリジナルのピックアップが搭載されています。
ただし、Playerはそもそもハムバッカーのため従来のジャズマスターサウンドはどうあがいても得られません。
Traditional < Hybrid II < Vintera の順でブライト、
Traditional < Vintera < Hybrid II の純でパンチがあるというイメージです。
まとめ
ちなみにUSA製で一番安い(163,900円)ジャズマスターであるPerformer Jazzmasterは、
ブリッジがストラトと同じシンクロナイズドトレモロのため、これもジャズマスター本来のトーンとは言い難いモデルです。
というわけで高ければ良いものでもなく、10万円台の価格において一番バランスに優れたジャズマスターは
・ブリッジへのテンションやピックアップなどジャズマスター本来のサウンド
・弾きやすく、弦落ちもしづらい
を兼ね備えた
Made in Japan Hybrid II Jazzmaster。
20万円以下のジャズマスターで最もおすすめできるモデルです。
カラーバリエーションはローズウッド指板モデルが3-Color Sunburst,Forest Blue, Arctic White、
メイプル指板モデルがBlack, Vintage Natural, Modena Redをそれぞれラインナップ。