【購入前必読】カタログではわからないギターの値段の違い

ギターには一万円以下から百万円以上のものまでありますが、いったいなにが違うのでしょう

ずばりこの3つです。

①人件費:技術をもった職人がどれだけ手間暇をかけたか
②材料費:木材やパーツなど素材のコスト
③ブランド料:作っている工場が同じでもブランドが変わると価格も変わる

これらは現在の新品に当てはまるものです。

中古品は需要と供給で相場が決まりますし、ヴィンテージの価格は希少価値にあたりますので、いったんスルーしてください。

①人件費:技術をもった職人がどれだけ手間暇をかけたか

一番大事なところはココです。

弾きやすさと音=楽器自体のクオリティに大きく影響します。

手間暇とは木材の買付けから、どのギターにどの木材を使うかの選定(木材については後述)、シェイピング、組込み、塗装、最後のセットアップに至るまで全てです。

つまり、単純にギターを作り上げるために費やした時間と、(習得するまでのコストも含めた)技術をどれだけふるったかです。

またネックの仕込み角度や、ナットの溝切りひとつでもコンマ1ミリ以下の違いでも弾き心地は全く異なります。

人間の手は見ただけではわからない微細な違いも、感覚でわかってしまいます。

ネックのシェイプやフレットエッジの処理、フレットのすり合わせなどでも演奏感やピッチは大きく変わります。

セットアップの技術力は弾きやすさや、楽器の鳴りを最大限に高めるためにも重要です。

安いギターの場合

人件費が安いアジアの工場を使っています。

酷いところだと、ギターがどういう物か、演奏されるものかを知らずに、精密ではない設計図だけでやっている工場もあります。

だいたい1万円前後とそれ以下の格安ギターにおいて弾きやすさは二の次です。

精度が低いためフレットの高さが不均一です。

その状態でナットの溝を削り過ぎてしまうと音づまりが発生しやすくなります。

音が詰まると不良品と判断されるため、時間がかけられないもしくは技術が無い場合は必然的にナット溝が浅くなり、特にローフレットを押さえる際の弦高が高くなります。

価格的には最低でも3万円以上が、楽器としてしっかり使えるものとなる目安です。

こういったギターをしっかりしたリペアマンに弾きやすいよう調整を任せても、そのギターの2倍くらいの金額は請求されると思います。

ちなみにアジア製が必ずしも悪いわけではなく、こんなところもございます。

材料費②:木材やパーツなど素材のコスト

木材自体の品質

小規模工房では信頼関係を築いた材木屋からマテリアルを買付けます。

自らの足で世界中を周りお眼鏡にかなったもののみを仕入れている工房もあります。

Sugi Guitars 杉本氏

Freedom Custom Guitar Research深野代表

しかしどんなに良い木材でも、組み合わせ次第では良い部分を引き出せません。

また例えば、同じメイプル材でも重さや木目は異なります。

木材同士の相性

それらの材が最大限活きるようネック材とボディ材とのマッチングさせるのも、経験が物を言います。

重いネックには軽いボディを充てるなどです。逆もしかり。

どちらも軽すぎるものだと芯の無いサウンドに仕上がったりします。

残念ながら現在は公開されていませんが、YouTubeのフェンダー公式チャンネルで、カスタムショップではこの工程が行われている旨の動画がありました。

また高品質なギターは、狂い出し、乾燥と含水率を均一にするシーズニングにも十分に時間を割いています。

これをしっかり行った木材は、ネックの安定性の向上、フレットのバリや 指板の割れが出づらかったり、(もちろん、日々のケアは必須です。)

狂いにくいので微細な調整も可能なギターに仕上がります。

パーツの品質

こちらは想像しやすいと思います。

ペグやブリッジは品質が良くなれば、チューニングの安定性や操作性は高くなります。

サウンドの要となるピックアップはピンキリです。

安いギターの場合

1本1本の木材の組み合わせなど個体差は考慮されず、

品種のみの判断での大まかなキャラクターのみを意識して企画されます。

さらにはローズウッドの代替材としてテックウッドなるものを使用しているものもあります。

ローズウッドの規制に伴い、安めの価格帯に採用されており、

サウンドうんぬんよりも湿度による痩せや割れが起こりやすい材です。

また十分な乾燥やシーズニングが行われていないものもあり、

ネックは反りやすいならまだしも、ロッド調整だけは修復が困難な波打ちや

塗装が施されない指板には割れが発生する危険性が高いものもあります。

③ブランド料:作っている工場が同じでもブランドが変わると価格も変わる

これはいかなる業界にも存在する資本主義社会の常識ですが、少し掘り下げてみます。

要は中間マージンです。

世の中には自分たちでギターを製造していないギターブランドが存在します。

Fernandes, Atelier Z, Greco, Aria Pro II, etc…

これらのブランドは他社のギター製造業者へ自分のブランドのギターを作るようよう依頼します(OEM製造)。

それによって仮に、OEM元が全く同じスペックでギターを製造すると、ブランドが付いたものの方が必然的に高くなるのは世の常。

とは言え、OEM製造元には思いもよらないスペックやデザインなどのセンスを持っていれば、長く続くブランドになっていくので一長一短でしょうか。

逆に自社で製造も行い直接卸しているブランド

Fender(直販もしていますが、店舗と同じ販売価格), ESP, Bacchus(Deviser), Takamine, etc…

エンドユーザーに直販している ブランド

Saito Guitars, T’s Guitars, 海外ではKiesel, etc…

は場合によってはコスパが高いかもしれません。

とは言え断言できず、もしかしたら利幅を大きくとっている可能性もありますので

また私はブランドから音が出るというのは半分冗談、半分本気で言っています。

というのも、奏者の気分でサウンドは確実に変わります。

ストレスが溜まっている→無駄に力む→ピッキングの質が下がる→出音が悪くなる

といった具合です。

なので、このブランドが間違いない、最高!と思って弾くギターでの演奏で絶対良くなるはずなんです。

コスパだけを考えず、良いものは良いと思ってギターに触れるのがよろしいと思います。

あなたが最高と思ったギターは、他の誰がなんと言おうと最高なのです!!

マーケティング

もうひとつブランドによって金額が大きく異なる理由のひとつが、マーケティング費用、要するに広告費です。

ブランドを認知させるためには広告費がかかります。

日用品のようにテレビCMはありませんが、雑誌やネット、YouTube動画(案件含む)など、普段何気なく目にしているものも、コストをかけてユーザーの目に届けているのです。

広告によって数が多く売れることを想定して商品価格に反映している場合もあるので、必ずしも割高だというわけではりません。

最後に

もちろんどちらかというわけではなく、それらを組み合わせた製造者もたくさんいらっしゃいます。

例えば現在の日本製フェンダーを手がけるダイナ楽器では、

木材は本国のフェンダーと同じ材木屋から仕入れることで品質向上を図る一方、

ボディの削り出しやネックのシェイピングには多くの工程を機会に頼る(=時間効率を上げる)、

ナットやフレット、最終セットアップなどの要の部分には人の手作業で行うことで、

大量生産を可能とし、ギターの価格を下げています。

また近年人気のSaito Guitarsは、ボディやネックを材からシェイピングする工程のほとんどを機械に頼っています。

これはネガティブな意味ではなく、生産効率最大化する事が目的で、機械だけに済ませるためには緻密なプログラミングを行っています。

逆に元々修理工房として培った技術を総動員してセットアップに最大限の時間的コストを使う事で、あれほどの高品質さと、価格を実現しています。

一方で高価でなくてもある程度のクオリティを保ったギターであれば、図らずして高価なギター同様の条件が満たされ、フィギュアド杢が現れたものや、弾きやすい、もしくは鳴りが良いなどの当たり個体が出来上がるラッキーもあるわけです。

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