●ライン録音用でも手軽にアコギサウンドが欲しい
●メキシコ製とUSA製Acoustasonic Jazzmasterの違いは?
という方のために、楽器屋店員のyosh(@yoshguitarblog)が解説します。
2022年11月にエレキ+アコギのハイブリッドのアコースタソニックシリーズに、メキシコ版ジャズマスターシェイプの「Acoustasonic Player Jazzmaster」が発売になりました。
特徴・メリットと使用時のおすすめアンプ、アメリカ製のAmerican Acoustasonic Jazzmasterとの違いレビューブログです。
●約16万円のハムバッカー搭載アコースタソニック
●真空管コンボアンプを使えば、エレキもアコギもこれ1本で出力
●ピエゾピックアップのエレアコ以上にアコギ音で手軽な録音用にも最適
●生音は大音量すぎないので、家で爪弾くアコギとしてもおすすめ
●スラム奏法などボディヒット音が欲しいならUSA製の方がおすすめ
メリット
①:アコギ+エレキのハイブリッドギター
②:エレキのような弾き心地でアコギサウンド
③:ハムバッカーピックアップ搭載
④:シリーズで最も大きいボディの生鳴り
メリット①:アコギ+エレキのハイブリッドギター
Fenderオリジナル設計のAcoustasonicシリーズ。
特許取得のStringedInstrument Resonance System(SIRS)というサウンドホール構造を採用。一般的なアコギよりもずっと薄いボディ厚ですが、生鳴りの音はアコギそのもの。
薄いボディなので普通のアコギほど奥行きのある響きはありません。しかしオリジナル設計のピックアップシステムにより、アンプから出す音はリアルなアコギサウンドが得られます。
加えてエレキギターのようなマグネティックピックアップも搭載。エレキギターのような音も出せます。
アコギの音とエレキの音を使い分ける事に加えて、その2つを混ぜてアウトプットすることも可能な、全く新しいギターです。
メリット②:エレキのような弾き心地でアコギサウンド
サウンドはアコギサウンドが強いですが、エレキギターのような快適な演奏性を持っています。
ネックシェイプはエレキギターでも一般的なCシェイプ。ナット幅は42.8mmで、狭めのアコギと同じくらいです。ネックの握り心地はエレキギターに近いと言えます。
フレットは22フレットで、高さもあるナロートールサイズ。左手での弦の押さえ心地は、エレキギターのフィーリングがあります。ボディが薄くカッタウェイもあるので、ハイフレットでの演奏もスムーズです。
ボディが薄いとアコギよりも抱えやすいですし、エルボーコンターとバックコンターで体にフィットするので、ライブやバンドなどの演奏も快適です。
エレキギタリストが手軽にライン録音でアコギの音を録音したいというニーズにもぴったりです。
メリット③:ハムバッカーピックアップ搭載
80年代Gibsonにてピックアップを開発していたTim Shaw。現在はフェンダーにてピックアップを開発しています。
Acoustasonic JazzmasterではそのTim Shawが設計のハムバッカーを搭載。テレキャスとストラトのアコースタソニックにはシングルコイルが搭載されていますので、それらと異なる濃密なサウンドが得られます。
アコースティックでは、エレキのマグネティックピックアップはブリッジ寄りに配置されています。シンラインやセミアコ的なメロウなサウンドが好みなら、ハムバッカー搭載のジャズマスターが良さそうです。
メリット④:シリーズで最も大きいボディの生鳴り
アコースタソニックシリーズにはテレキャスターとストラトキャスターシェイプ、そしてこのジャズマスターシェイプがラインナップされています。
この中でもジャズマスターシェイプは最も容積が大きいです。そのため生鳴りの大きさが大きく、低音域が強く出るのが特徴です。
内蔵サウンドボイス一覧
Fenderのサイトには内蔵音色の記載がありませんので、取扱説明書を参照しています。
ピックアップセレクターでポジションを切替えます。ブレンドノブでAとBの音色をシームレスにブレンドできます。
A | B | |
---|---|---|
ポジション1 | Fender Electric Shawbucker Clean: Tim Shaw設計ハムバッカーによる、高出力なエレキのクリーントーン | Fender Electric Shawbucker High Gain: クランチのリズムや鋭いリードに最適な歪みトーン |
ポジション2 | Piezo Clean: ピエゾピックアップとジャズマスターボディの響きによる、アコギトーン | Lo-Fi Piezo: ピエゾに歪みを加え、アコギとエレキを同時に鳴らしたトーンを再現 |
ポジション3 | Rosewood Concert Body with Slotted Headstock: スロッテッドヘッドのMartin 00-28風。フィンガースタイルに最適なサウンド | Mahogany Dreadnought: Martin D-18風。深い低域とアーティキュレーションを融合したアコギサウンド |
ポジション1はエレキのハムバッカーの音。完全なクリーントーンはもちろん、そこに少し歪みを混ぜるといったことも可能。特殊なボディの構造かつアコギ弦のため、ソリッドエレキギターとのサウンドとも異なる、エアー感あるエレキサウンドです。
ポジション2はピエゾピックアップの音で、多くのエレアコと同様の構造によるアコギサウンドが出せます。AとBをブレンドして、アコギと歪んだエレキを同時に鳴らしたようなサウンドも得られます。
ポジション3はピエゾで拾ったサウンドに、アコギの鳴りを再現したモデリング音に変換しています。ラインやアンプで出力すると、Takamineなどピエゾピックアップのエレアコよりも皆が求めるナチュラルなアコギサウンドが得られます。
ピエゾピックアップのエレアコや苦労するマイク録音よりも、手軽にリアルなアコギサウンドが鳴らせます。
ローズウッドサイドバックのスモールボディ由来の煌びやかなサウンドと、マホガニーサイドバックのドレッドノートによる低音域に迫力のあるアコギサウンドという、相反するトーンをミックスできます。EQを使わずして自然かつ理想のアコギサウンドが手軽に得られます。
デメリット:理想の音のためには使うアンプや音作りが重要
エレキの音もアコギの音も出せるアコースタソニックですが、使用するアンプに注意が必要です。
エレアコをエレキギターのアンプに繋いでも、完全なアコギサウンドは出ないですよね?基本的にはアコースタソニックも同様です。逆もしかりでエレキギターをエレアコアンプに繋ぐとハイファイすぎて、温かさのないサウンドになってしまいます。
どのサウンドを優先するかによって、使用するアンプを決めましょう。
アコースタソニックで使うおすすめのアンプは真空管のコンボアンプです。定番ならTwin ReverbなどのFender系、最近だとSHINOSのRocketです。
これならエレキらしいウォームなサウンドと、少しレンジが狭いものの一聴してアコギとわかるサウンドをアウトプットします。
【メキシコ vs USA】American Acoustasonic Jazzmasterとの違い比較
Acoustasonic Player Jazzmaster | American Acoustasonic Jazzmaster | |
---|---|---|
市場相場価格 | 168,300円 | 267,300円 |
生産国 | メキシコ | アメリカ |
ボディ | マホガニー | マホガニー |
ボディトップ | シトカスプルース単板 | シトカスプルース単板 |
ネック | マホガニー | マホガニー |
ネックシェイプ | モダン”Deep C” | モダン”Deep C” |
指板 | ローズウッド | エボニー |
フレット | 22 ナロートール | 22 ナロートール |
スケール | 25.5″ (647.7mm) | 25.5″ (647.7mm) |
指板ラディアス | 12″ (305mm) | 12″ (305mm) |
ナット | Graph Tech TUSQ | Graph Tech TUSQ |
ナット幅 | 1.6875″ (42.86 mm) | 1.6875″ (42.86 mm) |
コントロール | ボリューム、ブレンドノブ、3-Way | ボリューム、ブレンドノブ、5-Way |
ピックアップ | 2個 ●アンダーサドルピエゾ ●アコースタソニックショーバッカー | 3個 ●アンダーサドルピエゾ ●アコースタソニックショーバッカー ●ボディセンサー |
ボイス数 | 6種類 | 10種類 |
電源 | 9V電池/20時間 | 内蔵充電バッテリー/最大20時間 |
ケース | Deluxe 1225 Gigbag | Deluxe 1225 Gigbag |
弦 | フォスファーブロンズ11-52 | フォスファーブロンズ11-52 |
カラー | ●2-カラー・サンバースト ●シェル・ピンク ●アンティーク・オリーブ ●アイス・ブルー | ●オーシャン・ターコイズ ●ナチュラル ●タバコ・サンバースト ●タングステン ●アークティック・ホワイト |
Acoustasonic Player JazzmasterとAmerican Acoustasonic Jazzmasterには以下の違いがあります。
①:価格
②:生産国による木材と精度
③:ボディ内部センサーピックアップの有無
④:内蔵ボイス数
⑤:バッテリー
違い①:価格
生産工場や以下の違いにより、メキシコ製は168,300円、アメリカ製は267,300円で、価格差は約10万円です。
違い②:生産国による精度と木材
指板およびブリッジの木材に、メキシコ製はローズウッド、アメリカ製にはエボニーが採用されています。とは言え木材の違いによるサウンドへの影響は気にしなくて良いでしょう。
その他の木材は同じですし、後述のピックアップや内蔵ボイスで加工されたサウンドが出力されるわけですから。
特にコストに大きく関わる生産国(工場)の比較ですが、クオリティも大きく違うほどでもありません。
確かにナットの溝切りや仕込み精度による弾きやすさは、USA製の方が優れているように感じます。
しかしメキシコ製でもネックやフレットエッジの仕上げは十分で、ストレスを感じないクオリティの高さです。目にした個体では、塗装の荒さなども感じませんでした。
違い③:ボディ内部センサーピックアップの有無
エレキ的なマグネティックの専用ハムバッカー(Acoustasonic Shawbucker)と、フィッシュマン製アンダーサドルピエゾは両機種に搭載されています。
アメリカ製はそれに加えて内部にボディセンサーも搭載。これによりボディ鳴りのエアー感と奥行きが加わり、もっとリアルなアコギサウンドが出力されます。ボディヒットの音も拾ってくれるので、スラム奏法やルーパーを使うプレイヤーはアメリカ製の方がおすすめです。
違い④:内蔵ボイス数
メキシコ製の方がピックアップが1つ少ないため、ピックアップセレクターによる音色切替が6種類です。アメリカ製は10種類。
American Acoustasonic Jazzmasterの音色は以下の通り。
A | B | |
---|---|---|
ポジション1: エレクトリック | エレクトリックファット/セミクリーン: ハムバッカーPUによるエレキのクリーンサウンド。 | エレクトリックオーバードライブ: ハムバッカーPUによるオーバードライブサウンド。 |
ポジション2: | Lo-Fi Piezo: ピエゾピックアップのみによるエレアコサウンド。 | Lo-Fi Piezo クランチ: ピエゾサウンドに、オーバードライブサウンドをブレンド。 |
ポジション3: パーカッション&エンハンスドハーモニクス | ローズウッドオーディトリウム: Martin 000-28風。タイトかつブライトでストロークにもフィンガーにも最適。 | ボディ内部ピックアップのブレンド: アコギサウンドにボディヒットやハーモニクスをブレンド。 |
ポジション4: オルタナティブアコースティック | マホガニージャンボ: Gibson SJ-100風。ラウドでエアー感のあるアコギサウンド。 | オールマホガニースモールボディ: ウォームでタイトなフィンガースタイルに適したサウンド。 |
ポジション5: コアアコースティック | ローズウッドドレッドノート: Martin D-28風。温かみもあり明瞭で、倍音も豊かなアコギサウンド。 | マホガニースロープショルダー: Gibson J-45風。ドライでオーガニックなストロークに最適なアコギサウンド。 |
ハムバッカーのサウンドと、ピエゾピックアップのサウンドはクリーンと歪みの組み合わせを加えてほぼ同じキャラクターです。
一方USA製には、内部センサーピックアップによるヒット音や奥行きのある響きがあるポジション3を始め、アコギサウンドの種類が多いです。
違い⑤:バッテリー
電源はメキシコ製がエフェクターなどでも使われる9V電池。アメリカ製はmicro-USBケーブルで充電可能なバッテリーを内蔵しています。
どちらも駆動時間はおおむね20時間です。
まとめ・選び方
・ギター1本でエレキのハムバッカーとアコギの音を出したい
・エレキのような弾きやすさでアコギサウンドが欲しい
・普通のアコギを家で弾くには音量が大きすぎる
・アンプを繋がずに気軽に、でも良い音で家でつまびきたい
・ボディヒット音は必要ないので約10万円安い方が良い
・Takamineなどのグレードのエレアコよりも、アコギの豊かさがあるモデリング音をラインアウトしたい
・スラム奏法もラインで出力したい
・ルーパーでパーカッシブな音を追加したい
・ボディセンサーによるさらにリアルなアコギサウンドが欲しい
・豊富で多彩な内蔵音で音作りを追求したい