【USAとの違い】PRS SE Sliver Skyレビュー

 
・話題のSE Silver Skyって実際どうなの?

・アメリカ製Silver Skyとの違いは?

・10万円台で良いシングルコイルPUのギターを探している

という人に読んでいただきたい、現役楽器屋店員のyosh(@yoshguitarblog) が実際に弾いてみた感想も含めた徹底解説レビューです。

SE Sliver Sky 特徴

①:USモデルの約1/3の価格を実現したコスパが高いインドネシア製

②:オリジナルネックシェイプとピックアップ

③:音程が安定している

特徴①:USモデルの約1/3の価格を実現したコスパが高いインドネシア製

ジョンメイヤーが長年愛用するヴィンテージストラトキャスターを基に、ポールリードスミスが2年に渡る研究開発の末に2018年に完成したSilver Sky。ヴィンテージギターのサウンドとフィーリングを再現した上で、ツアーなどいかなる環境でも同様のパフォーマンスを安定して引き出せるとしてジョンメイヤーのメインギターになっています。2021年アメリカのオンライン楽器販売サイトreverb.comでは最も売れたUSA製ギターとなり、シグネチャーモデルの枠に留まらない完成度の高さがうかがえます。

SE Silver Skyはそのコストパフォーマンスモデル。本家USAモデルの1/3の価格に抑えながら、こだわりの特徴を継承しています。ボディシェイプはもちろん、ジョンメイヤーのプレイスタイルを考慮した独自のヘッドストックデザイン、スモールサイズのバードインレイなどルックス面もファンには嬉しいポイント。

中国製よりもクオリティが高く世界中のブランドがOEM製造拠点として採用しているインドネシアのCor-Tek工場。Ibanezやstrandbergなど10万円前後から30万円に迫る製品も製造していることからも、技術力の高さがうかがえます。PRS SEシリーズも2019年より同社に新設された専用ラインを採用しています。

そのためネックのエッジも滑らかに仕上げられているため、手の移動した際にフレットがひっかかる、というような感覚はありません。

特緒②:オリジナルネックシェイプとピックアップ

63年と64年の間という意味で63.5年から635JMと名付けられたネックシェイプはUSモデル同様、1963〜1964年製ストラトを意識しています。同価格帯のメキシコ製Fender Player StratocasterのモダンCシェイプよりもそこそこ肉厚です。

ピックアップはSE Silver Sky専用の635JM”S”を搭載。ネックの太さも相まってか、特に中音域に密度のあるトーンで艶っぽくもあり、アタック感もあるまさにジョンメイヤー直系サウンドが得られます。

特徴③:音程が安定している

音程が安定しているという点はギター本来の品質が高いということに他なりません。マテリアルのグレードを落としながらも、改造では改善しづらいピッチの良さを優先した結果と考えられます。実際にしばらく弾いてみても和音の響きがよく、音程が狂うということもありませんでした。

こちらの動画1:04からジョンメイヤー本人もこの点に言及しています。

デメリット

①:ポプラボディ

②:電装パーツが安価

③:ルックスがややチープ

デメリット①:ポプラボディ

スペック至上主義の人には受け入れられないであろうポプラ材の採用。ポプラはこれまで安価なギターで採用されていた印象が強く、10万円台のギターでの採用に抵抗があるのもわかります。過去FenderのMustangにも採用されていたとはいえ、ここについては2点わたしの持論を。

1点目、昨今の木材の枯渇が影響がないとは言えないでしょう。木材の種類にこだわりすぎて低品質なものまでも採用してしまうよりは、品質基準を満たしながら安定供給できる木材を採用するのは至極当然です。事実3kg台前半の個体が多い点は確実に考慮していると言って良いでしょう。

2点目、どんな材であろうと最終的に出てくる音を重要視した結果と考えられます。ポプラボディを使う上で塗装やピックアップ等のバランスで、ジョンメイヤー本人も認めるサウンドを実現したのがSE Silver Skyです。

これらを踏まえてもポプラボディが生理的に無理という人はUSA製を買えば良いのですが、そもそもこの点に文句を言う人はどっちのSilver Skyも買わない(買えない?)人が多いんだろうなぁという印象です(笑)。

デメリット②:電装パーツが安価

価格のために仕方ないのでしょうがここは残念ポイント。ポットには韓国製が、ジャックも形状から安価なものが採用されていると判断できます。(超高音域を削ったピックアップの特性とキャビティ内の導電塗料があるにしろ)その影響もあってかサウンドにもうひとつ煌めきが足りないように感じるのも事実。

そのままでも使えないサウンドでは決して無いですが、がっつり愛用したい人にはポット、ジャック、ピックアップセレクターをUSA製などグレードの高いものに交換することをおすすめします。

デメリット③:ルックスがややチープ

よく言えばポップなカラーなのですが塗装の仕上げ(発色)と、やや飴色のサテン仕上げのネックが少しチープに見えてしまうきらいがあります。そこまで気にしない人の方が多いでしょうが、ギターオタク目線だと気になるかもしれません。

USA製Silver Skyとの違い

SE Silver Sky(インドネシア製)
Silver Sky(US製)

スペックの違いはこちらの表の通り。以下詳しく解説します。

SE Silver SkySilver Sky
生産国インドネシアアメリカ
ボディポプラアルダー
ネックメイプルメイプル
指板ローズウッドローズウッド
or メイプル
指板ラディアス8.5インチ7.25インチ
スケール25.5インチ25.5インチ
ネックシェイプ635JM635JM
ネック厚53/64インチ
(1/2フレット部)
53/64インチ
(ナット部)
ナット幅1 20/32″(41.275mm)1 21/32″(42mm)
ボディ部指板幅2 7/32″(56.356mm)2 7/32″(56.356mm)
ナット人工骨牛骨
インレイスモールバーズスモールバーズ
ヘッドロゴPRS Signature/SEPRS Signature
ロッドカバープラスチック製, 大きい金属製, 小さい
ブリッジ2点支持スチールトレモロ6点支持スチールトレモロ
チューナーヴィンテージスタイル, 非ロック式ヴィンテージスタイル, ロック式
ピックアップ635JM”S”635JM
コントロール1ボリューム, 2-トーン, 5-wayセレクター1ボリューム, 2-トーン, 5-wayセレクター
ポット韓国製USA製
キャビティ内導電塗料ありなし
塗装ポリ系2021年モデルよりラッカートップ(NOC)
カラー・Ever Green ・Stone Blue ・Moon White ・Dragon Frut・Dadgem Blue
・Frost
・Golden Mesa
・Midnight Rose
・Moc Sand
・Orion Green
・Tungsten
・Polar Blue
ケースギグバッグギグバッグ
市場相場価格123,200円393,800円

サウンドの違い

SE・・・ミッドレンジにフォーカスした太いサウンド。やや甘くコンプレッション感があり、歪ませやすい扱いやすいサウンド。

USA・・・芳醇なミッドレンジがありながらハイまで綺麗に出る立体感あるサウンド。ダイナミクスが豊かでプレイヤーの繊細な表現も出力する玄人好みのサウンド。

大まかなサウンドキャラクターは同一線上にありますが、SEの方がマイルドな印象です。特にボディ+塗装、ピックアップ、電装周りがそのキャラクターを形成していると考えられます。

特にハーフトーンを聞き比べるとその違いがわかりやすいです。

ボディ材

SEがポプラ、USA製がアルダーです。ヴィンテージストラトと言えば言わずもがなアルダーボディですが、SEではなぜポプラを採用したのでしょうか。

推測ですがPRSが重要視したのはズバリ重量。USA製も本体重量は3kg台前半の個体がほとんど。これは偶然ではなくウェイトコントロールできるだけの良質なアルダーが確保できるからに他なりません。しかしSEの価格帯で全ての個体をこの重量で、かつアルダー材を使い叶えることは不可能。代替材としてその重量での安定供給が可能かつサウンドの方向性も寄せることが可能なポプラの採用となったのではないでしょうか。

つまり材のキャラクターは他でコントロールできるが、重量が与えるサウンドもしくは演奏性(あるいは両方)を最優先にした結果が、ポプラ材の採用と考えられます。

ナット材

SEが人工骨(Synthetic Bone)、USAが牛骨(Bone)。またサイズ・取り付け方も異なり、USAの方が本家ストラトキャスターを踏襲しています。SEは他のPRS SEシリーズと同様の形と取り付け方のため、これまでと同様の製造ラインを使うための策と言えそうです。

チューナー/トレモロ

https://youtu.be/pN7uIkgI21kより引用

チューナーはどちらもクルーソンスタイルながらUSAのみPRSロッキングシステムを採用しています。

そしてトレモロブリッジはSEがモダンな2点支持スタイル、USA製が6点支持のヴィンテージスタイル。SEのこれらの組み合わせは先述のピッチの良さを実現するための配慮なのか、それともボディ材とブリッジの振動を考慮してあえての2点支持なのかという点は妄想の域を出ませんが。。。

しかしトレモロブロックのサイズが異なるのもサウンドのトータルバランスを考慮してでしょう。細かいですがバックパネルの有無も違いがあります。SEがパネルありです。

ピックアップ/電装パーツ

635JMピックアップですがSEは他のSEシリーズのピックアップ同様”S”の表記があり、同じものではありません。サウンドキャラクターを踏襲するためにレシピなど踏襲している部分はあるのでしょうが、出力はSEの方がやや高いです。

加えてポット・ジャック・セレクター・コンデンサーといった電装パーツもSEは安価なものを使用しています。

そしてキャビティ内は無塗装のUSAに対し黒い導電塗料が塗られています。導電塗料はポピュラーなノイズ対策ですが、同時に超高音域が出なくなりサウンドがマイルドになっています。よく言えばSEの方がノイズが少ないと言えます。

塗装/カラー

塗装はSEがポリ系、USAが2019年モデルよりアンダーコートにCAB(樹脂)とトップコートにラッカーを採用したNOC(Nitro Over Cellulose)フィニッシュ。コスト的にもそうですが、ポプラ材にはポリ系のがっしりした塗装の方がサウンドに芯が得られポジティブと考えらます。

カラーはSEとUSモデルに共通カラーは存在しません。つまりカラーを見ただけでどちらのモデルかは判断できます。メタリック系カラーや質感はやはりUSモデルには高級感があります。USモデルのみメイプル指板もラインナップしています。

生産国

全てのSEシリーズ同様、インドネシア国内のCor-TekのPRS専用工場にて生産。USモデルは全てのUSA製同様、アメリカ国内のメリーランド州のPRS工場にて生産されています。工場の違いは特に職人のスキルの違いと製造の時間(木材のシーズニングから職人の作業時間)によって、品質と価格に表れます。高価なギターが良いのではなく、品質を高くするには高価になってしまうということです。

とは言えSEシリーズは極上の演奏性とまでは言えませんが、ストレスを感じるような品質ではなく、むしろストラト系の中でもちゃんと弾きやすいです。この点こそSEのコスパが高いと言われる理由です。

指板ラディアス/ナット幅

指板ラディアスはSEが8.5インチ、USAが7.25インチ。ナット幅はSEが41.275mm、USA製が42mmという微妙な違い。これらの点もヴィンテージストラトを踏襲しているのはUSA製ですが、演奏性は上級者好みなのも事実。この点においてはコスト面ではなく、SEはより幅広いプレイヤー層への弾きやすさを考慮したシリーズのコンセプトから採用したとのことです。

ネックシェイプ

スペック上は同じ635JMですがSEの方が少し薄いです。それでも現代のフェンダーのモデルより肉厚なのは前述の通り。またUSAモデルではローズウッド指板が635JM-Rという表記でサイドの丸みがわずかに大きくなっています。

これもSEの方が多くのプレイヤーにとって無理なく弾きやすい形状と言えるでしょう。

ルックス

大きくはカラーを除きルックス面では同じです。一見ストラトのようですが高音側のホーンをカットした形状や、ネックジョイント部のサウンドとプレイアビリティにこだわった形状、ヘッドストックに至るまで見た目はSilver Skyそのもの。

コントロールノブ、ピックアップセレクターノブ、ジャックプレートもまたUSA製同様にオリジナル形状。ジョイントプレートの形状も同じで、ジョンメイヤーのサインが入っていますが、SEの文字も入ります。

とは言え細部の仕上げや質感も詳細に見ると、USA製にはSEに無い精巧さ、美しさを感じます。

価格

SEはUSA製393,800円の約1/3の123,200円。USを買える予算があったとしても、USモデルを買うも良し、SEを買って残り20万円で他の機材(ギター、エフェクター、アンプ等々)を買う、どちらも良い選択でしょう。多くの比較レビュー動画でもわかる通りそのサウンドは優劣では無いことがわかります。

余談ですが2022年よりPRSの日本法人が本格始動しました。Gibson, Fenderについで輸入代理店というものを通さず、本国の意志が色濃く反映されるマーケティングと流通基盤が適応されます。PRSにおいては(並行輸入品を除いて)Fender以上に店舗の違いでの価格差が無いように見えます。

SE Silver Skyはこんな人におすすめ

・手軽にジョンメイヤーサウンドを体感したい

Fenderをはじめとする多くのシングルコイルは耳に痛い

・シングルコイルのセカンドギターとして使いたい

USA製 Silver Skyはこんな人におすすめ

・ディープJohn Mayerファン

・普段からチューブアンプをよく弾く

・細部のタッチも綿密に意識してプレイする

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