●スペック最高峰のパワーサプライってどんなの?
●マルチエフェクターもパワーサプライで駆動させたい
という方に、元楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、最高スペックのコンセント付きパワーサプライ、K.E.S. KIP-AC208MSのメリット・デメリットをレビューします。
コンセント付きパワーサプライFree The Tone PT-5Dとの違いも比較します。
日本で入手できる最高スペックのコンセント付きパワーサプライ。
ACコンセントを2系統使えるので、大型のマルチエフェクターも使えます。
DC出力は全てアイソレートされており、アナログとデジタルエフェクターを混在して駆動できます。最大消費電流量はすべて500mAのため、ほとんどのコンパクトエフェクターに使用できるでしょう。
圧強めの電圧は9.8Vがメインで、解像度が高いサウンドを実現します。ほか2系統は9V/12V/18Vの電圧切替も可能。
ただしかなり好みが分かれるデザイン面、コンパクトサイズでの放熱なのでダブラーケーブルの仕様は非推奨です。
現状コンセント付きのパワーサプライが欲しい場合は、この機種が一番おすすめです。
KIP-AC208MSのメリット
- 2系統のACコンセント出力付きパワーサプライ
- 2系統の9/12/18V切替出力
- 6系統の圧強め9V出力
- アナログとデジタルエフェクターを同時に使えるフルアイソレート
- ボードに収めやすいコンパクトサイズ
合計10台へのエフェクターへ電源供給可能
DC出力が合計8個、AC出力が2個の合計10台へのエフェクターへ電源供給が可能です。
設計にもこだわっており、ノイズも少なく安定して電源供給が可能な高品質なパワーサプライです。
1台のパワーサプライで供給できる台数としては、多めです。エフェクターマニアでなければ、エフェクターボード内の全てのエフェクターに電源供給ができるはずです。
2系統のACコンセント出力付きパワーサプライ
いわゆる一般的な電源アダプターが挿せるACコンセントがついています。
9V以外の電圧や500mA以上の大容量の消費電流量が必要な、大型のマルチエフェクターも駆動できます。
ACコンセント付きのパワーサプライはあまり存在しませんので、これがあるだけでもKIP-AC208MSを選ぶ理由になります。
6系統の圧強め9V出力
K.E.S.のパワーサプライの代名詞 #圧強め。
本機の9V出力は、約9.8Vの電圧を確保しています。
新品の電池の音を好むギタリストが多いですが、その理由は電圧の高さにあります。9V表記の電池でも、新品時には10V近い電圧があるのです。本機はその”新品時の電池”の電圧を再現しています。
本機が電池よりも優れている点は、その高電圧をずっと維持し続けられることです。
例えば、高めの電圧で歪みエフェクターを使うと、「レンジが広くなる」「解像度が高くなる」「ニュアンスやギター側のボリューム操作で、音色をコントロールしやすくなる」といったメリットがあります。
2系統の9/12/18V切替出力
パワーサプライのDC出力のうち2つが、9V/12V/18Vの切替が可能です。
一般的なエフェクターの多くは9Vで対応します。しかし、一部エフェクターは12Vや18Vじゃないと使えないものがあります。
さらに、一部の歪みエフェクターは9Vから18Vのいずれでも使えるものがあります。この電圧を変えることで音色が若干変わるので、好みの音色に近づけやすくなります。
アナログとデジタルエフェクターを同時に使えるフルアイソレート
「フルアイソレート」とは、電源供給の際に各エフェクター間の電気的な干渉を完全に遮断する技術です。
フルアイソレートではないパワーサプライで、アナログとデジタルエフェクターを同時につなぐと、ノイズが出る可能性が高いです。
さらにやっかいなのが、「アイソレート」と書いてあっても、ノイズが出る低品質なパワーサプライもあるんです。
しかしKIP-AC208なら、アナログとデジタルのエフェクターが互いに影響を及ぼすことなく、それぞれの特性を100%発揮することができます。
ボードに収めやすいコンパクトサイズ
サイズはわずか240 x 54 x 30mm/360g。
台数が多ければ多いほど、ボード内のスペースに悩まされますが、このサイズはかなり助かるでしょう。
ちなみに、合計8台のエフェクターへ電源供給ができるFender Engine Room LVL8のサイズは、244 x 42 x 91.3 mmなので、かなり小さいことがわかります。
安定性や品質を犠牲にしたわけではないので、ご安心を。
KIP-AC208MSのデメリット
- クセ強めデザイン
- ダブラーケーブル非推奨
- 消費電流が大きいエフェクターを多く使う場合計算が必要
クセ強めデザイン
音質には影響がない部分ですが、あまりに賛否両論なのでw
K.E.Sは、楽器の輸入代理店・商社のキクタニミュージックのオリジナルブランド。
K.E.Sのパワーサプライは、サイバーパンク的なデザインがかなり特徴的。
圧強めが合言葉のK.E.Sですが、デザインのクセも強め。
このあたりは個人の好みですが、評判はあまりよくなさそうですw
ただし、実際にボードに入っているのを見ると、案外浮いていないなと感じました。
ダブラーケーブル非推奨
出力をH個使ってX StompやGT-1000COREを駆動させるダブラーケーブルの使用は、おすすめされていません。
筐体自体を放熱板として使用した設計のため、かなり熱を持ってしまい誤動作する恐れがあるためです。
500mAを超えるエフェクターは、ACコンセントを使用するようにしましょう。
消費電流が大きいエフェクターを多く使う場合計算が必要
ACコンセント部は、最大6Aまで使用できます。これはDC部分の使用量には関係ないのであまり考慮する必要はありません。別のパワーサプライを接続したり、大型のマルチエフェクターも使用できるでしょう。
一方、DC出力の8系統は最大18Wとなります。
圧強めであるため9.8Vになってしまうことや、可変電圧により、全てのDC出力にエフェクターに接続する場合は、計算する必要があります。
全ての8個の出力に500mAを接続することはできません。詳しい計算方法は付属マニュアルをご覧ください。
https://www.kikutani.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/08/KIP-208MS.pdf より引用
Free The Tone PT-3Dとの比較
仕様 | K.E.S. KIP-AC208MS | Free The Tone PT-5D |
---|---|---|
市場相場価格 | 24,750円 | 30,800円 |
電圧可変DC出力端子 | アイソレーテッド2系統: 9/12/18V@500/375/250mA | – |
9V DC出力端子 | アイソレーテッド6系統:9.4V@500mA | アイソレーテッド2系統:9V@500mA 6系統:9.5V@100mA |
合計DC出力数 | 8系統:最大18W | 8系統 |
出力 | ACコンセント2系統:100V合計最大6A | ACコンセント3系統:100V合計最大6A |
本体寸法 | 240 x 54 x 30mm | 256 x 55.2 x 37.6 mm |
本体重量 | 360g | 485g |
付属品 | 電源ケーブル、GOLD plated DC cable 30cm×6, 60cm×2 | DCケーブル 30cm L/L x 4本、50cm L/L x 4本、専用電源ケーブル×1本、保証書、取扱説明書 |
市場には、AC(コンセント)を挿せるパワーサプライはほとんどありません。
過去Noah’s arkにも似たパワーサプライはありましたが、ノイズ面や品質のばらつきがありおすすめしません。
電源タップを使わずにパワーサプライのみでAC電源供給をしたい場合は、この2機種どちらかになると思います。
スペックで2機種比較すると、K.E.S.の方が制約なく様々なボードに使えると行って良いでしょう。
DC出力
Free The Tone PT-5DのDC出力は、全てがアイソレーテッド出力ではありません。
ですので、デジタルエフェクターが使えるのは2個までです。3個目からはACアダプターを使う必要があります。
残りの6系統の出力はアイソレーテッドされていません。
最大電流量も100mAです。
一般的な歪みペダルでは足りますが、ボードに使っている組み合わせによっては足りなくなる可能性もありそうです。
さらに、電圧は9V出力のみ。12Vや18Vのエフェクターを駆動させる際にもACアダプターが必要になってしまいます。
一方、K.E.S.のDC出力は8系統全てがアイソレーテッドになっています。
アナログやデジタルといったことを考慮せず、8台のエフェクターが使えると行って良いでしょう。
また2系統は9V/12V/18Vいずれかに切替可能で自由度が高いです。
AC出力
いわゆるコンセントです。ACアダプターがそのまま使えます。
消費電流量が大きいマルチエフェクターや、ワーミーなどを使うのに最適です。
こちらはFree The Tone PT-5Dが3系統あります。
ただし、DC出力で足りないエフェクターもこちらを使うことになりますので、使い方を検討する必要があります。
K.E.S.のAC出力は2系統です。
その他
サイズ・重量はどちらの機種も、10台のエフェクターを駆動させられるパワーサプライとしては、かなりコンパクトだと言えます。
Free The Tone PT-5Dはこんな人におすすめ
- 電流量が多かったり、特殊な電圧のエフェクターを3個使う
- コンセントを使って別のパワーサプライを使い、12台以上のエフェクターを駆動させたい
- アナログエフェクターが多く、DC出力が100mAでも問題ない
まとめ
KIP-AC208MSは、最大10台のエフェクターに電源供給が可能です。
そのうえ、コンパクトなのでボードのスペースも気にせず設置できます。
AC2系統、フルアイソレーテッドDC出力、電圧可能なDC出力など、多くの組み合わせのエフェクターに使える、かなり自由度が高いユーザーフレンドリーさが秀逸。
こんなあなたはK.E.S. KIP-AC208MSを買うと後悔するかもしれません
- エフェクターのデザインや統一感を重視している
- 11個以上のエフェクターをボードに設置している
11個以上のエフェクターを使用している場合、KIP-AC208MSのコンセントを使って別のパワーサプライを駆動させることもできます。
残りコンセントが1個になってしまいますが、これでも良ければアリですね。
K.E.S. KIP-AC208MSはこんなあなたにおすすめです
- コンセント付きのパワーサプライが欲しい
- 9.8V出力の解像度が高いサウンドが欲しい
- ボード内のエフェクターは10台以下
- ボード裏に仕込むからデザインは気にしない or むしろ好き
- 500mAなど高消費電流量のエフェクターを2個以下使う
- ダブラーケーブルでも駆動できない1A以上の大型マルチエフェクターを使う