エレキギターはスペック(仕様)から演奏性やサウンド傾向が比較的把握しやすい楽器です。当ブログでは【スペックの読み方】と題し、スペックの違いによるギターのキャラクターの違いを説明します。
ネットで好みのギターを探したり、オーダーメイドする際の参考になれば幸いです。
今回のテーマはボディマテリアル。
エレキギターの音は電気信号だから、木材の違いで音は変わらないという少数派意見があります。
もちろんわたしは影響ある派です。
ない派の理論は
弦振動をピックアップが拾った電気信号がアンプから増幅されるだけで、
使用されている木材は影響ない、というものです。
ここで考慮されていないのは
弦振動がネックやボディに伝わり、その振動がまた弦の振動に影響を与える
という点です。
Fenderの本国サイトにて紹介されているボディ材によるサウンドの違いを参考にご紹介します。
Alder(アルダー)の特徴
リッチで、ファットなローエンドと程良くカットされる中域、全体にウォームさとサスティンを持っています。
アルダーはトラディショナルなストラトキャスターのボディ材です。
フェンダー系なら、いわゆる枯れたトーンに大きく起因します。
フェンダー以外にも加工しやすい木材として、多くのギターに使用されている最もポピュラーなボディ材のひとつです。
ギターと言えばこの木材ですね。
Ash(アッシュ) の特徴
ブライトなエッジを持つトーンですが、同時にウォームな低域とロングサスティンを持っています。
アルダーとは別のトラディショナルなストラトキャスターのボディに使われます。
フェンダーサイトに記載されているこの”別の”ストラトキャスターとは、50年代のストラトや、70年代のストラトを指します。
オフィシャルサイトながらここを一緒くたに記載されているのがなんともアメリカンですが
50sはスワンプアッシュ
70sはホワイトアッシュ
が使用されています。
Swamp Ash(スワンプアッシュ)
別名 Light-Weght Ash(ライトウェイトアッシュ)とも呼ばれます。
ホワイトアッシュに比べると生育が早いため、密度が低く、軽量です。
サウンドは高域の抜けが良く、中域もしっかりあります。
ホワイトアッシュに比べれば低域はやや控えめです。
最近のモダンなギターに使われるアッシュはほぼこちらのスワンプアッシュです。
流行りのSAITO GUITARもこれです。アルダーに対し、1万円のアップチャージです。
トラッドなアッシュのサウンドなら50sテレのパキパキな感じですし、
モダンサウンドのアッシュならサイトーのサウンドが最もイメージしやすいアッシュのキャラクターかと。
木目が美しく着色しないナチュラルカラーも採用されますし、
その木目の導管を生かしたフィニッシュも注目されています。
White Ash(ホワイトアッシュ)
密度が高いため、硬く、重量もあります。
サウンドは重厚な低域とエッジーな高域が特徴のタイトなサウンドです。
一方中域はやや落ち着いています。一言で言うとドンシャリですね。
どちらかと言うとベースで好まれます。
70sベースや、アトリエZなどに代表されるどっしりとしながら、スラップなどの高速でパーカッシブなフレーズにもよく合うサウンドです。
あとはラージヘッドが特徴の70sストラトもDeep Purpleのリッチー・ブラックモアも筆頭に、ハードロックギタリストにも好まれますね。
Poplar(ポプラ) の特徴
ギターのボディに耐えうる強度の中では、柔らかめな木材のひとつ。
多くのギターメーカーが、サウンド特性が近いアルダー材の代替材として使用します。
とはいえ近年はソリッドで使われているケースはあまり見ませんね。
個人的にはESPの初代ドラえもんギターのボディがポプラだった記憶があります。
最近はむしろ、バール杢の出たPoplar Burlをトップ材に採用しているものがポピュラーですね。
Basswood(バスウッド) の特徴
フェンダーでは多くの日本製ギターのボディに使用されています。
これはアジアの工場がバスウッドを簡単に入手できるだけでなく、アルダーにも似たサウンド特性によるものです。
ここ日本ではどうしても安価な木材としての負のイメージが強く槍玉に挙げられる感は否めません。
これは本国USAでは使用されず、フェンダージャパンのみに採用され、かつ当時のフェンジャパの安価さも手伝った印象でしょう。
わたし個人としてはそんなイメージは無く、コンセプトありきの積極的な採用にはむしろ好印象です。
Music ManのEddie Van Halenモデルや、そこから派生したAxis、
suhrのModernなどUSA製ハイエンドモデルにも採用されています。
いずれもトップ材にメイプルを貼ることでサウンドのトータルプロデュースをしているようですね。
近年ではstrandbergの日本製にも採用されていますし
こちらにも記載しましたが、Tosin AbasiのUSAモデルならRoasted Basswoodが採用されています。
このdjentな両モデルでは”軽量さ”に着目されているようです。
Mahogany(マホガニー) の特徴
ディープでウォームな中域と良好なサスティン、そして”バイト感”が特徴です。
フェンダーではあまり採用される事がないためあっさりとした解説です。
もうひとつの一大ブランドGibsonではマホガニーが最も使われるボディ材です。
マホガニーにも様々な種類がありますが、代表的な材がこちら
Honduras Mahogany(ホンジュラスマホガニー)
日本ではホンマホと略されます。
現在ワシントン条約のリストにも載っており、輸出入が困難なため使用されるものが少ないのが現状です。
ヴィンテージに使用されているマホガニーがこちらです。
希少性とリアルヴィンテージに使われている経緯から人気も高いですが、後述のアフリカンマホガニーより優れていると一概には言い難く、
品質の高いアフリカンマホガニーを使用し、その他の材やパーツの組み合わせで素晴らしい品質のギターも数多く存在します。
African Mahogany(アフリカンマホガニー)
枯渇するホンジュラスに匹敵し、それなりに材供給も安定しているアフリカンマホガニー。
それなりの価格帯のギターのスペックに記載のあるマホガニーはこれを指すものがほとんどです。
ギターに最も重要な中域が濃密で艶やかさがあるサウンドです。
様々なジャンルに会いますが、ズンズンくるハイゲインでのブリッジミュートのサウンドが
メタルにマッチして個人的に好きな材のひとつ。
ジェントの方はもっとレンジが広く、輪郭の際立つアッシュがいいですね。
Maple(メイプル) の特徴
パンチがありブライトで、ハイエンドにバイト感があります。
単体でボディに使うと重くなるため、ボディトップにラミネイトで使われることがほとんどです。
Les Paulや、PRS Custom24がまさにそれですね。
フレイム杢やキルト杢などフィギュアドのものはサウンドもさることながら、
美しいルックスもギターに欠かせない要因のひとつです。
まとめ
以上、ギターのボディに使われる木材のキャラクターの違いをまとめてみました。
どうしても文章になると伝わりづらい部分が多いので、
ギターを弾く際にどの木材が使われているかを意識して弾き比べて経験を積んでいただければと思います。