ギターはスペック(仕様)から演奏性やサウンド傾向が比較的把握しやすい楽器です。当ブログでは【スペックの読み方】と題し、スペックの違いによるギターのキャラクターの違いを説明します。
ネットで好みのギターを探したり、オーダーメイドする際の参考になれば幸いです。
今回のテーマは木取りである、柾目と板目
特にネック材で意識されるスペックです。
スペックに記載される事は少ない項目ですが、メーカー側がわざわざ記載しているくらいであれば、
設計段階で出音を意識したこだわりのスペック
と言えるでしょう。
T’s Guitars DST-DXなどがそうですね。
記載がなかったとしても、個体差を見出す指標のひとつとなります。
年輪
それぞれの特徴の前になぜ違いが出るのかをざっくりご説明します。
樹木は季節によって成長の仕方が異なります。
春から夏にかけては、ひとつひとつの細胞は形が大きくなるため細胞壁が薄くなります。
そのため色が薄くなります。
この部分を春材や早材と呼びます。
一方夏から秋にかけてはその逆で、細胞が小さく細胞壁が厚くなります。
こちらは夏材、秋材や晩材と呼びます。
早材より色が濃くなります。
この繰り返しがそれぞれの材の境界が年輪として現れます。
熱帯地域の樹木には数年単位での細胞分裂の区切りで、成長輪が現れるものもあります。
画像引用元
コトバンク
柾目
丸太から取れる割合は1割と言われる希少部位です。
木材を縦方向に切る際に中心を含んだ材。断面は年輪の縞模様が狭い感覚でまっすぐ通っています。
年輪が詰まっており強度が高いです。
特にネックの場合は、弦の張力に強い=ネックの反りには強いです。
※反らないわけではありません。
理屈で言えば極々稀にロッド調整の90度方向に曲がる可能性があります。
ただし板目より高価な柾目では製作段階でのシーズニングもしっかり行われるため杞憂でしょう。
ペグやビスの穴を空ける際に欠けたり、裂けやすいため製作者には配慮が必要です。
英語ではQuarter Sawnなどと記されます。
サウンドへの影響
強度が高いためサウンドはタイト。
例えばPRSのUSA製Custom24には基本的に柾目のマホガニーネックが使用されています。
柔らかく角度付きで折れやすいレスポール的な弱点を強化することと、
マホガニーメインのマテリアルでも立ち上がりの良さを付加するための仕様です。
板目
材のコストからギターに使用される材の大半は板目です。
中心を外れた材。断面が放射状の模様になります。
樹皮の内側と外側では収縮率が異なるため狂いやすいです。
ネックの場合、弦の張力による影響はやや受けやすいです。
しかしこちらもシーズニングがしっかり行われた確かなクオリティであれば、そこまで気にする要素ではないです。
英語ではFlat sawnなどと記されます。
サウンドへの影響
柾目よりも良く鳴る印象で図太めのサウンド。ブルースやトラディショナルなロックに向いています。
事実フェンダーのマスタービルダーであるトッドクラウス曰く、エリック・クラプトンは板目にこだわっているとのこと。
判別の仕方
左が柾目、右が板目です。
正面から見てわかりづらい場合は側面から見てください。
画像引用元
upfrontguitar.com
まとめ
柾目
希少で高価。強度が高くタイトめなサウンド。
板目
一般的。ネックがしっかり響く感じの太いサウンド。
特にネック材で意識される柾目と板目ですが、
ハイエンドモデルならネックとボディのマッチングを考慮して組み上げるため、
一概に柾目ならタイトなサウンドとも言えません。
プラスアルファの要素として意識すればよろしいかと思います。