エレキギターはスペック(仕様)から演奏性やサウンド傾向が比較的把握しやすい楽器です。当ブログでは【スペックの読み方】と題し、スペックの違いによるギターのキャラクターの違いを説明します。
ネットで好みのギターを探したり、オーダーメイドする際の参考になれば幸いです。
では今回のテーマはネックジョイント
【スペックの読み方】ネックジョイント
ギターのネックとボディをつなぐネックジョイントの工法の違いで、サウンドや弾き心地などが異なります。
スペックにはNeck JointのほかConstruction(コンストラクション)などと表記されます。
種類は下記の3つ
・ボルトオン(デタッチャブル)
・セットネック
・スルーネック
ボルトオン(デタッチャブル)
ネジでボディとネックを結合するものを ボルトオンと呼びます。一般的なフェンダースタイルであれば4本のボルトとネックプレートを使用します。特徴は下記の通り。
立ち上がりが早い
アタックから発音までの立ち上がりが早いサウンドになります。
カッティングには非常にマッチします。
強度が高い
ベース特に多弦ベースであれば弦の張力がかなり強いため、4点以上でジョイントするものもあります。
サウンドの微調整が可能
ボルトの締め具合でサウンドが変わります。
ボルトをがっつり締めると、ボディとネックがしっかり結合し
ボディとネックの弦振動のロスが減るため、タイトでサスティンが長くなる傾向があります。
逆にボルトを緩めると、
ボディとネックにやや遊びができるため、倍音感が増しトラッドなサウンドになります。
いわゆるヴィンテージストラトやUSA製は、このボディ-ネック間の遊びがあることが多くトラッドなサウンドの傾向が強いです。
日本製は精度が高くカッチリ作ってあるものが多いので、国産=硬いサウンド、良く言えばタイトなサウンドと評されることが多いです。
これら生産国や精度によるサウンドの傾向はボルトオンに限った話ではありませんが、ボルトの締め方によるサウンドの変化だとイメージしやすいかと思います。
また、これを手軽に調整できるよう、 Freedom Custom Guitar Research は ARIMIZO & One Point Joint という機構を搭載したギターを開発しています。
また、ジョイント部のネックプレートもサウンドに影響を及ぼします。
厚いまたは硬い、重い材質のプレートではサスティンが長く直線的なサウンドに
薄いまたは柔らかい、軽量な材質のものは倍音が出るサウンドになります。
こちらも同様にFreedom Custom Guitar Researchよりカスタムパーツが発売されています。
製造上のコスト削減
ボディとネックを別々に製造できるのでコストが削減できます。
ただし、必ずしも安く上げるためでなく、サウンドなどそのギターのトータルバランスからボルトオンを採用しているものがほとんどです。
また、トラスロッドが効かなくなったり、ねじれたネックをそのまま交換できるというメリットも上げられます。
しかしセットネックなどで同様の症状に陥っても、指板調整などでの修理は可能なので、このメリットだけでボルトオンを選ぶ必要は無いです。
ネック交換とは言え、新しいネックのサイズや取り付け角度などかなりシビアで、新しく作るにもかなりのコストがかかります。
ハイフレットの演奏がやや困難
他に比べネックジョイント部が厚くなるため、 ハイフレットの演奏性が やや低いです。
これもヒールレスカットやネックプレートを廃し、演奏性を向上させたものもあります。
セットネック
ボディとネックを接着剤で接着する工法です。レスポールなどギブソン系でよく採用されています。特徴は下記の通り。
アコースティックな響き
ネックとボディの間に金属を含まないため、ウッドマテリアルのキャラクターがサウンドにダイレクトに反映されます。
タイトさやサスティンについては、前述の国産、USA産の違い同様作りの精度によります。
またフロントピックの下までネックが差し込まれたディープジョイントは
ヴィンテージレスポールに採用されており、ジャパンヴィンテージのグレコなども同様の工法を用いていながらやや安価のため人気があります。
ネックとボディの接地面積が増えるためややサスティンが伸びる傾向です。
コスト高い
同グレードのものであれば、ボルトオンよりも高くなります。
例えば渋谷のギターショップG’Seven Guitarsのブランドg’7 Specialだと
レスポールタイプはストラトタイプの2から3倍の価格差があります。もちろんマテリアルのコストの差などもありますが。
ハイフレットでの演奏性
これもトラディショナルなレスポールなどではボディ厚もあるため、ボルトオン並みであることもあります。
SGやフライングVはボディ厚が薄いため(カッタウェイが深いという理由もありますが)、ハイフレットの演奏性は高いです。
ボルトオン同様、ヒールレスカットにより演奏性を向上させたものもあります。
特にシェクターダイアモンドシリーズのHellraiserなどではスルーネックと見紛うような滑らかな仕上げです。
ちなみにこのヒールレスカットは、日本のブランドAria ProIIの名機PEが史上初採用で、ギター業界の発展を願いあえて特許は取得しなかった説もあります。
スルーネック
長いネック材のサイドに、ボディ材(ウイング材)を接着します。
80-90年代に登場し、当時の一大ギタームーブメントだったHR/HMユーザーに受け入れられました。逆に現代ではあまり見られないですね。
演奏性の高さ
ハイフレットは圧倒的に弾きやすい傾向です。
同様にローフレットでも弦高が低く押さえられるものが多い印象があります。
これはセットネックよりも、もっとコストがかかるため、それなりにしっかりしたギターにしか採用されない点と、メタル系ユーザーに好まれる工法のため、ギターのコンセプトもそうなっているような気がします。
サスティンの長さ
3つの中では最もサスティンが長いと言われます。
そもそもボディとネックの接合と言うよりは、ネック材にピックアップやブリッジがそのまま乗っている形になっていますので、弦振動のロスが少ないです。
以上エレキギターのジョイントのメリット、デメリットなど特徴をまとめてみました。
スペックの読み方を何となくでも掴んでいただければ幸いです。
ご自身が所有するギターを演奏する際はもちろん、他人のギターを触らせてもらう時や、お店での試奏の際も、そのギターがどんなスケールなのかを意識して演奏していくと自分の中での知識として定着していくと思います。