・プロ仕様のバッファー搭載ペダルチューナーを探している
・予算は1万円台前半
・エフェクターボードに収めやすいサイズが良い
・野外のライブでチューナーが見えなくて困ったことがある
という人に、現役楽器屋店員のyosh(@yoshguitarblog)がKORG Pitchblack Xシリーズをレビュー。全4機種の違いと選び方もまとめました。
・1万円台前半なのにプロ仕様のバッファー搭載チューナー
・野外でも見える明るさとメーターの滑らかさ
・ボードに合わせて選べるサイズ展開、XSシリーズは市場でも貴重なサイズ感
Pichblack X シリーズのメリット
①:レンジが広めのナチュラルなバッファー[ULTRA BUFFER]
②:野外でも使える視認性の高いLEDメーター
③:レコーディングにも対応できる±0.1セントの高精度
④:4種類のメーターディスプレイモード
デメリット
①:ストロボモードの測定精度が他社よりも低い
メリット①:レンジが広めのナチュラルなバッファー[ULTRA BUFFER]
Pitchblack Xには本機のためにKORGが新たに開発した、ULTRA BUFFERを搭載しています。
KORGはDT-10を始め長年ペダルチューナーの定番機種を販売してきました。しかし近年tc electronicのPolytune 3や、BOSS TU-3W(技クラフト)など、チューナーとしての精度が良いのはもちろんのこと、チューナーを使わない時に音痩せが起こらないように、高品質なバッファーを内蔵した機種が人気です。
エフェクターボードの中で、一番最初にこれらの高品質なバッファーを内蔵したペダルチューナーを接続しておけば、複数のエフェクターを接続しても音痩せが起こりづらくなります。
Pitchblack XのULTRA BUFFERはこれらの機種に劣らないプロ仕様の高品質なバッファーです。3m程度のケーブルでアンプ直で接続した時と同じように、煌びやかな響きもしっかり残ります。
メリット②:野外でも使える視認性の高いLEDメーター
明るさ・大型ディスプレイ・メーカーLEDの細かさ・チューニングがあった際の点滅により、従来機種よりも格段に見やすく、チューニングしやすくなりました。
メーターLEDの数は従来機よりも増えたことで、ピッチの変化や揺れが把握しやすいです。
メーターは基本青色でピッチが合った際には白色に変化し、三角の表示が点滅するためわかりやすいですね。
明るさは通常モードとブライトモードの2段階で切替可能。日光の元の野外でもよく見えるほど、明るくすることができます。
メリット③:レコーディングにも対応できる±0.1セントの高精度
ストロボモード時では±0.1セントの誤差に抑える高精度な表示が可能です。
そのためレコーディングや同期音源と合わせるライブなど、プロレベルのシビアな現場でも使用に耐えうる精度です。
※cent(セント)は半音の100分の1を表す単位
メリット④:4種類のメーターディスプレイモード
チューニングメーターの表示は4種類から選択できます。
- レギュラー・モード:一般的なチューナーと同様の表示。音程が低いとメーターは左側に、高いと右側に振れます。
- ストロボ・モード:ピッチのズレが大きいとメーターが速く、ピッチが合うに従い遅くなります。誤差を細部まで視認できます。
- ハーフ・ストロボ・モード:ズレの表示はストロボ・モードと同様ですが、ピッチが高い時は右側、低い時は左側のみが表示されます。
- ミラー・モード:ピッチが合うに従い、メーターが左右から中央に向かって表示されます。高低はメーター下の三角で判断できます。
Pichblack X シリーズのデメリット
耐久性に不安がある
筐体は非常に軽量なのは良い点である。しかしそれは、耐久性を下げていることも意味する。特にPichblack XSは画面を踏むことになるので、頻繁にon/offを切り替える人には向かないでしょう。
ストロボモードの測定精度が他社よりも低い
ストロボペダルチューナーの先駆けSonic Research ST-300や、ペダルチューナーの定番人気機種TC Electronic Polytune3のストロボモードの測定精度は±0.02セントです。
KORG Pitchblack Xシリーズは±0.1セント。ちなみにBOSS TU-3Wの測定精度は±1セント。
精度が高すぎると逆に完璧にピッチを合わせるのは困難だったりします。そのためライブなどで使用する際には、KORGの精度くらいがちょうど良く使いやすいと感じる人も多いでしょう。
バンド全体でのチューニングをこだわりたかったり、レコーディングでシビアにしたいという人でなければ±0.1セントで問題はありません。
ストロボモードを使わないのであれば、無視してOKです。
旧機種Pitchblack ADとの違い・進化点
Pitchblack X | Pitchblack Advance | |
---|---|---|
音律 | 12平均律(クロマチック) | 12平均律(クロマチック) |
測定範囲 | E0(20.60Hz)〜 C8(4186Hz) | E0(20.60Hz)〜 C8(4186Hz) |
基準ピッチ範囲 | A4=436〜445Hz | A4=436〜445Hz |
測定精度 | ±0.1セント | ±0.1セント |
ディスプレイモード | レギュラー、ストロボ、ハーフ・ストロボ、ミラー | レギュラー、ストロボ、ハーフ・ストロボ、ミラー |
ブライトモード | あり | なし |
バイパス | バッファー/トゥルーバイパス 切替可能 | トゥルーバイパスのみ |
接続端子 | インプット アウトプット DC 9V IN DC 9V OUT | インプット アウトプット DC 9V IN DC 9V OUT |
電源 | 9Vまたは電池 | 9Vまたは電池 |
電池寿命 | 最大約24時間 | 最大約60時間 |
消費電流 | 最大28mA | 最大20mA |
サイズ | 69(W) × 110(D) × 49(H) mm | 68(W)x 111(D)x 47(H)mm |
重量 | 248 g(電池含む) | 257 g(電池含む) |
旧機種Pitchblack Advanceとの仕様比較表です。
チューナー面での仕様差はほとんどありませんが、Pitchblack Xの方が下記の点が強化されています。
・バイパスがウルトラバッファーとトゥルーバイパスで切替可能
・メーターのLED数が増え、ピッチ変化の表示が滑らか
・ディスプレイの明るさの切替が可能で、野外でも良く見えるほど視認性が向上
これから購入する人であれば、新しいPitchblack Xシリーズにしておけば間違いないでしょう。
現在旧機種を使っており、システム上トゥルーバイパスで問題なく、ディスプレイが見づらくないという人であればわざわざ買い替える必要はないかもしれません。ただしストロボモードでの測定精度は±0.1セントで同じですが、LEDメーター表示の滑らかさが全然違うので、きっちりチューニングしたい人はPitchblack Xの方が合わせやすいでしょう。
Pitchblack Xシリーズ全4機種の違いと選び方
新しいPtichblack Xシリーズは全4機種のラインナップ。ご自身のシステムに合わせた選択が可能です。
Pitchblack Xシリーズ比較表
Pitchblack X | Pitchblack XS | Pitchblack X mini | |
---|---|---|---|
市場相場価格 | 13,200円 | 13,200円 | 11,000円 |
バイパス | ULTRA BUFFER/TURUE BYPASS切替 | ULTRA BUFFER/TURUE BYPASS切替 | ULTRA BUFFERのみ |
入出力端子 | INPUT/OUTPUT | INPUT/OUTPUT | INPUT/OUTPUT |
電源端子 | DC 9V IN DC 9V OUT | DC 9V IN | DC 9V IN |
消費電流 | 最大28mA | 最大40mA | 最大30mA |
電池 | 9V電池 | 不可 | 不可 |
ディスプレイモード | ●レギュラー ●ストロボ ●ハーフ・ストロボ ●ミラー | ●レギュラー ●ストロボ ●ハーフ・ストロボ ●ミラー | ●レギュラー ●ストロボ ●ハーフ・ストロボ ●ミラー |
ブライトモード | オン/オフ | オン/オフ | オン/オフ |
LEDカラー | 青と白 | 青と白 | 青と白 |
測定精度 (ストロボ時) | ±0.1セント | ±0.1セント | ±0.1セント |
測定範囲 | E0(20.60Hz)〜C8(4,186Hz) | E0(20.60Hz)〜C8(4,186Hz) | E0(20.60Hz)〜C8(4,186Hz) |
基準ピッチ範囲 | A4=436〜445Hz | A4=436〜445Hz | A4=436〜445Hz |
サイズ | 69 x 110 x 49 mm | 70 x 80 x 47 mm | 45 x 93 x 43 mm |
重量 | 248g(電池含む) | 198g | 124g |
それぞれの特徴と選び方を解説します。
Ptichblack X
サイズ、機能がスタンダードなモデル。
バイパスは高品質なウルトラバッファーとトゥルーバイパスの切替が可能。
本モデルのみの特徴は、一系統9Vエフェクターが駆動できるDC OUT端子と、9V電池で駆動可能です。これらの機能が欲しい場合はPitchblack X一択です。
・プロ仕様のバッファー内蔵チューナーが欲しい
・視認性が高いチューナーが良い
・一般的なペダルサイズが良い
・ボードをよく組み替えるのでバッファーon/off切替したい
・9V電池で使用したい
・他のエフェクターに給電したい
Ptichblack XS
最大の特徴はエフェクトボードの空きスペースに収まりが良く、省スペース化が可能な点です。
このフットスイッチを廃したデザインは、BOSS TU-3Sくらいしか選択肢が無かったので、発表時Pitchblack Xシリーズにおいて、最もマニア受けが良い機種です。TU-3Sよりもディスプレイが大きく、on/offも可能、そしてBOSSよりもナチュラルなサウンドの高品質バッファーを搭載している点が強いです。
通常のフットスイッチを廃しディスプレイをフットスイッチ化したことで、ディスプレイの大きさを確保しながらサイズを小さくしています。ディスプレイのどこを踏んでもOn/Offできます。
Pitchblack X同様に、ウルトラバッファーとトゥルーバイパスの切替が可能です。ただし電池駆動は不可、アダプター・パワーサプライ等でのみ使用可能です。
・プロ仕様のバッファー内蔵チューナーが欲しい
・視認性が高いチューナーが良い
・ディスプレイの大きさは確保しつつ、ボードの省スペースを図りたい
・ボードをよく組み替えるのでバッファーon/off切替したい
・他のエフェクターに給電したい
Ptichblack X mini
その名の通りPitchblack Xをミニサイズ化したモデル。
省スペースになっていますが、幅が狭いためディスプレイも少し小さいです。
また機能がやや制限されており、ウルトラバッファーのみでトゥルーバイパスへの切り替えは不可。電池駆動もできません。
・プロ仕様のバッファー内蔵チューナーが欲しい
・輝度が高いチューナーが良い
・ミニサイズがボードへの収まりが良い
・バイパスの切替は必要ない
・電池では使わない
Ptichblack X Pro
このモデルはペダルチューナーではなく、ラック型チューナーです。
仕様は以下の通り。
市場相場価格/発売時期 | 25,300円 / 2023年1月下旬発売予定 |
バイパス | ウルトラバッファーのみ。トゥルーバイパスへの切替不可。 |
ディスプレイモード | レギュラー、ストロボ、ハーフ・ストロボ、フォーカス |
LEDカラー | 青赤グラデーション、緑赤グラデーション、シアン、緑、青 |
ブライトモード | ブライトモード固定 |
接続端子 | フロント…INPUT 1端子(φ6.3モノラル標準ジャック)、OUTPUT 1端子(φ6.3モノラル標準ジャック)、CABLE CHECK端子(φ6.3モノラル標準ジャック) リア…INPUT 2端子(φ6.3モノラル標準ジャック)、OUTPUT 2端子(φ6.3モノラル標準ジャック)、DC 9V IN端子 |
電源 | 9Vセンターマイナス |
消費電流 | 最大140mA |
サイズ | 本体のみ…430(W) × 50(D) × 44(H) mm(突起物含む) ラックマウント・アダプター使用時…482(W) × 50(D) × 44(H) mm(突起物含む) |
質量 | 379g |
チューナーの測定精度などはシリーズ共通です。
メーターがとにかく大きいので視認性は抜群。ラックマウントはもちろん、付属のラックマウントアダプターを底面に付け替えれば、床置きも可能。
フロントパネルにも入出力端子を備えているので、エフェクターボードへの設置も可能です。狭い隙間に設置できるので重宝する人も多そうです。ボードに入っているとインパクトありますね。
LEDカラーの変更も可能です。
さらにフロントパネルにはケーブルチェッカー機脳を搭載。ケーブルの両端をインプット端子とケーブルチェック端子に接続すれば、ケーブルが断線していないか確認できます。
・メーターはできる限り大きい方が良い
・ラックに組み込みたい
・エフェクトボードの細長いスペースにちょうど良い
・エフェクターボードで目立たせたい