●ギブソンとエピフォンどっちが良い?
●エピフォンを買っても後悔しない?
●50sと60sって何が違うの?
という方に、現役楽器屋店員のYosh(@yoshguitarblog)が、忖度なしの徹底レビューします。
- エピフォンのレスポールは低価格で使える数少ないモデル
- 音も演奏性も、50sはビンテージ志向、60sの方が扱いやすい
- 見た目や弾きやすさはギブソンに劣る
- ギブソンの方が上級者好みの音
- 1本目か2本目のギター購入や、ブランドにこだわっていない、塗装の耐久性を優先するならエピフォンでも後悔しない
- 予算はある、ルックスにこだわりたい、ニュアンスなどもっと上達したいならギブソンの方がおすすめ
エピフォンについて
Epiphone(エピフォン)は、現在ではGibsonの傘下ブランドとして認知されています。
しかし、元々は1873年に設立。様々なオリジナルモデルを開発し、ビートルズなど数多のアーティストが使用してきました。その後1957年ギブソンに買収後、ギブソンの廉価モデルも発売しています。
現在では中国の自社工場で品質を保ちながら、リーズナブルなギターを製造しています。
最新の工作機械を導入しながらも、品質を上げるために多くの行程を手作業で行っています。
メリット
正真正銘のレスポール
初心者でも買える価格の数少ないレスポール
王道レスポールサウンド
正真正銘レスポール
Epiphoneはギブソン以外で、現在唯一レスポールの名称を使う事が許されているブランドです。
レスポールはGibsonの登録商標です。そのため他のブランドで「レスポール」という名前でギターは作られません。
EpiphoneはGibson傘下のブランドなので、正真正銘のレスポールと認められています。
初心者でも買える価格の数少ないレスポール
現在の市場では、安価なレスポールタイプのギターは少ないです。
セットネック構造やアーチトップボディなど、製造行程が複雑だからです。
しかし、エピフォンのLes Paul Standardは、専用工場とギブソンの品質基準に沿って製造しているので、価格と品質のバランスが良いです。
初心者がレスポールタイプのギターを探している場合、エピフォンのLes Paul Standardは間違いなく検討すべき選択肢の一つと言えます。
王道レスポールサウンド
Epiphoneでも、このLes Paul Standardであればギブソン・レスポール直系の、リッチで豊かなサウンドです。
このサウンドは、レスポールが持つマホガニーボディやセットネック構造、そしてハムバッカー・ピックアップによって生み出されています。
ハムバッカー・ピックアップは、シングルコイル・ピックアップに比べてノイズが少なく、より太く力強いサウンドを出力します。
これにより、エピフォンのLes Paul Standardは、豊かでリッチなサウンドが必要なロックやブルース、分厚い歪み必要なパンク、メロコア、ハードロック、メタルなどに最適です。
デメリット
価格相応の弾き心地
ヘッド形状がギブソンと違う
見た目に高級感がない
パーツに互換性がない箇所がある
価格相応の弾き心地
ギブソンや、エピフォンよりも価格が高い日本製と比べると、弾き心地の調整には限界があります。
高額なギターに比べて、微細な精度が低いためです。
そのため、ネックやブリッジの調整を行っても、ギブソンにはやや劣る演奏性と言えます。
しかし、ネックの握り心地が悪い、ひっかかりを感じる、といった安いギターにありがちな粗悪さは無いのでご安心を。
加えて、ミディアムジャンボサイズの大きいフレットを採用しているので、左手は少ない力でも弦を押さえることができます。
つまり、弾きやすさにおいてはギブソンに比べると劣るだけで、決して弾きづらいわけではありません。
ヘッド形状がギブソンと違う
ヘッドの形状はギブソンと完全に同じではありません。
ギブソン製レスポールのヘッドはオープンブック型と呼ばれる形状です。
一方、エピフォン製レスポールのヘッドは、2020年にカラマズーヘッドという新形状変更されました。
従来のエピフォンよりも、ギブソンに近い形状になり、ユーザーからの評判は良くなりました。
見た目に高級感がない
ギブソンと比べて、塗装と木材の質の違いから、マニアなら見た目わかる程度に高級感は劣ります。
エピフォンはポリ系の塗装で、照明を当てたときの質感はピカピカで光沢があります。
経年劣化が大変少なく耐久性が高いというメリットがありますが、高級感はやや劣ります。
また、安価に抑えるために、色味や木目が高額ギターとは異なる木材が使われています。
パーツに互換性がない箇所がある
エピフォンの一部パーツは、エピフォン専用の規格が使われており、別売りのパーツに交換することができません。加えて、パーツの規格は告知なく変更されるようです。
具体的には、ブリッジやピックガードはそのまま交換できないことが多いようです。
壊れた時やアップグレードのための改造に、パーツ交換できないことがあります。
ただし、ピックアップやペグ、ポットを丸ごと交換する分には問題ありません。
Epiphone Les Paul Standardの仕様
仕様 | |
---|---|
ボディ | メイプルトップ+マホガニーバック |
ネック | マホガニー |
ネックジョイント | セットネック |
指板 | インディアンローレル |
スケール | 628mm |
指板ラディアス | 305mm |
フレット | 22, ミディアムジャンボ |
ナット | 43mm, グラフテック |
ブリッジ | Epipohne LockTone Tune-O-Matic |
コントロール | 2-ボリューム、2-トーン, CTS製ポット |
ピックアップセレクター | Epiphone |
エピフォンのLes Paul Standardの基本的な仕様です。
メイプル+マホガニーボディと、マホガニーネックを、セットネックでジョイントといった、木材は王道のレスポールを踏襲。
指板材のみローズウッドではなく、ローレルを採用。色合いと質感は非常にローズウッドに似ており、一見して安価なローズウッドとの差はほとんど見られません。
演奏性に大きく関わる、スケールや指板ラディアスも王道レスポールの仕様。
フレットが大きめのミディアムジャンボを使っているので、弦が押さえやすい仕様を採用しているのも嬉しいポイント。
さらにボリュームとトーンのポットは、ギブソンと同じCTS製を採用しています。
50sと60sの違い選び方
Epiphone Les Paul Standardには50年代のレスポールを再現した、Les Paul Standard 50sと、60年代を再現したLes Paul Standard 60sがラインナップされています。
それぞれの違いを一覧表にまとめました。
50s | 60s | |
---|---|---|
市場相場価格 | 6万〜8万円前後 | 6万〜8万円前後 |
ボディトップ | AAAフレイムメイプルベニア+メイプル | AAフレイムメイプル |
カラー | メタリック・ゴールド、ヴィンテージ・サンバースト、ヘリテイジ・チェリー・サンバースト | エボニー、バーボンバースト、アイスティー |
ノブ | ゴールドトップハット | ゴールドリフレクターノブ・シルバーインサート |
ネックシェイプ | 50s ラウンデッドミディアムC | スリムテーパー 60s C |
ピックアップ | プロバッカー1, プロバッカー2 | プロバッカー2, プロバッカー3 |
ペグ | Epiphone ヴィンテージデラックス | Grover ロトマティック |
サウンドの特徴 | 落ち着いた太い音 | 伸びのあるクリアな音 |
ルックスの違い:ボディトップとカラー
ボディのトップの木目のグレードとカラーで、見た目の印象が異なります。
木目について50sの方がAAAグレードで、フレイム杢が良く見える個体が多いです。しかしべニアの突板なので、見る角度によって表情が大きく変わらず、深みがありません。
模様は本物の木なのですが、非常に薄いべニア板を貼っているだけだからです。
しかし、メイプル+マホガニーの上にこの化粧板を貼っているので、サウンドの特性における影響はありません。
また、杢目に関しては個体差もあり、50sでもあまり派手じゃない個体もあったりします。
一方、60sは木目の派手さが欠けるAAグレードですが、べニア突板ではありません。その分、個体差は大きいですが、見る角度によって表情を変えるものもあります。
カラーはそれぞれのラインナップで異なり、同じ色は存在しません。しかし、バーストカラーは茶色系と赤系で近い感じのものがあります
また、ボリュームとトーンのコントロールノブが、それぞれの年代に使われていた形のものが採用されています。
演奏性の違い:ネックは50sが太く、60sはやや薄い
50sは、これぞレスポールという印象の、太めのネックシェイプです。
ネックを握りこむようなプレイヤーが多い、ブルースやクラシックロックなど、伝統的なジャンルに向いています。
60sは、比較的薄めのネックシェイプです。
速いフレーズや、アルペジオなど、軽いタッチで弾きたいプレイヤーに向いています。ジャンルとしては、ハードロック、メタル、フュージョンなどです。
どちらもフレットが大きめなこともあり、一般的な初心者向けギターよりも弾きやすいです。
サウンドの違い:50sは太く、60sはクリア
ピックアップとネックシェイプ、ペグが違うので、同じ王道レスポールサウンドでありながら、若干違いが見られます。
サウンドの違いをまとめると、下記の通りです。
60s:やや高音域が強調された、クリアでアタック感のあるタイトなトーン。オーバードライブからディストーションまで、歪みとの相性が良いサウンドです。
ピックアップは、プロバッカーの後につく数字が大きくなるほど、パワーも上がります。
また、ネックは太い方が中音域が押し出される傾向にあります。薄い方が中音域が削れて、高音域が聞こえやすくなります。
あまり注目はされていませんが、ペグの重要の違いによって音が変わります。
具体的には重い60sのグローバーの方が、サスティンが長く、ストレートになる傾向にあります。
ブルースなどビンテージ志向は50s、ロックや初心者には60sがおすすめ
Epiphone Les Paul Standard 50sは、ウォームなトーンと、ニュアンスを生かした演奏ができるビンテージ志向のレスポール。
Epiphone Les Paul Standard 60sは、クリアでタイトなトーンと、歪みの相性が良いロック志向のレスポールです。
一般的なギターと比べて大きな差が無いCシェイプネックで、多くのユーザー、特に初心者には60sの方がおすすめ。
太いネックが好きなら50sが良いです。極端に太すぎるということはありませんので、サウンドやルックス面で50sが好みなら、慣れるまで弾けるでしょう。
【Gibsonとの違い】弾き比べてみた個人的な感想
Gibson Les Paul Standard 50s | Epiphone Les paul Standard 50s | |
---|---|---|
市場相場価格 | 35〜40万円前後 | 7〜8万円前後 |
ボディトップ | メイプル | AAAフレイムメイプルベニア+メイプル |
ボディバック | マホガニー | マホガニー |
ネック材 | マホガニー | マホガニー |
指板材 | ローズウッド | インディアンローレル |
指板ラディアス | 12インチ(305mm) | 12”(305mm) |
ネック形状 | Vintage 50s | 50s Rounded Mideum C |
スケール | 24.75インチ(628mm) | 24.75インチ(628mm) |
ナット幅 | 1.695インチ(43mm) | 1.692インチ(43mm) |
ナット | Graph Tech | Graph Tech NuBone |
フレット数 | 22, ミディアムジャンボ | 22, ミディアムジャンボ |
インレイ | アクリル・トラペゾイド | トラペゾイド |
ピックアップ | Burstbucker 1&2 | Probucker 1&2 |
コントロール | 2ボリューム、2トーン、トグルスイッチ(オレンジ・ドロップ・キャパシター搭載) | 2ボリューム、2トーン、トグルスイッチ |
ブリッジ&テイルピース | ABR-1 Tune-O-Matic&アルミニウム・ストップバー | Epiphone LockTone Tune-O-Matic&ストップバー |
チューナー | Gibson Deluxe | Epiphone Vintage Deluxe |
フィニッシュ | Gloss Nitrocellulose Lacquer | Gloss Poly |
ケース&付属品 | ハードシェルケース、ギブソン・アクセサリーキット | エピフォン・ソフトケース |
見た目の違い:マニアにはわかる違い
どちらも正式なレスポールを名乗っていますが、全く同じではありません。
使用している木材やパーツ、塗装、ヘッドストックだけでなく、ボディシェイプやカーブの具合など、細かなディティールも全く同じではありません。
- トップ材:ギブソンは無垢のフィギュアドメイプルで深みがあり、見る角度によって表情が変わります。ただし、個体差が大きく派手な杢目ではありません。エピフォンはフィギュアドメイプル突板で、どの個体にも派手さがあります。
- 指板材:エピフォンのインディアンローレルは、従来の安価なローズウッドと見た目はそんなに変わりません。しかし、ギブソンのローズウッドと比べれば、少し明るく彩度が少ない感じがします。
- 塗装:ギブソンは艶やかなニトロセルロース・ラッカー塗装で、管理に注意が必要です。エピフォンは耐久性に優れたポリ塗装。ラッカーに比べると、表面の質感がプラスチックっぽいとも言えます。
- ヘッドストック形状:ギブソンはオープンブック形状、エピフォンはKalamazooヘッドストック。
- その他:ボディのカーブ具合やパーツの形などが、実は微妙に違います。
パッと見ではどちらもレスポールですが、マニア目線で見ると、ヘッドを見なくても判断できてしまう違いはあります。
演奏性の違い:ギブソンの方がストレスが無い
エピフォンが弾きづらいわけではありませんが、ギブソンの方がよりストレスなく演奏できます。
ギブソンの方が使っているパーツの質が高いことに加えて、精度が高く、調整の幅が広いです。
私は弦高が少し低めが好きなのですが、ネックをまっすぐにしてブリッジを下げるだけで、ストレスが無いセッティングが完了します。
エピフォンで同様の調整をしても、同じ弾き心地にはなりませんでした。しかし、フレットの際が当たって痛いなどといった品質の低さはありません。
音の違い:ギブソンは繊細、エピフォンはストレート
どちらもサウンドは王道レスポールサウンドですが、ピックアップや木材などの違いによって、特徴が異なります。
ギブソンの方が、豊かなハーモニクスやダイナミックレンジを持ち解像度が高いです。ピッキングの強弱など、演奏者の繊細な演奏の違いをアウトプットする表現力の高さが伺えます。
エピフォンもレスポールらしいリッチなサウンドが特徴ですが、ギブソンほどの繊細さがなく、よりストレートなサウンドです。初心者にとっては、こちらの方が扱いやすいと感じる人が多いでしょう。
こちらの動画でGibsonとEpiphoneのレスポールを弾き比べしています。
どちらがエピフォンか、目隠しでテストしていますが、不正解の場面もあります。
エピフォンのサウンドの質は、ギブソンに劣っているとは一概に言えず、キャラクターの違いであるとも言えます。
ギブソンより安い理由
エピフォン(約7〜8万円)とギブソン(約35〜40万円)という、5倍程度の価格差があります。
- 製造コスト:生産工場の場所は人件費に直結します。特にアメリカは昨今の物価高騰が激しく、人件費も高騰しています。
- 塗装:ギブソンのラッカー塗装は、乾燥などに時間が多くかかります。エピフォンのポリ塗装の方が大量生産に向いており、価格が下げられます。
- 木材:エピフォンではボディトップ材に、希少性の高いフィギュアドメイプルを採用せず、指板材もローズウッドを使用しないことでコストを下げています。
- パーツ:ブリッジやピックアップなど、エピフォン独自のパーツを採用しています。
1本1本の製造にかける時間を短くして人件費を削減し、木材やパーツなどのコストを下げることで、エピフォンは低価格を実現しています。
結果的に、弾き心地やサウンドにも違いがありますが、セットネック構造でこの価格帯にしては非常に優れた品質と演奏性で、初心者や中級者には十分な性能を持っています。
私が実際に弾き比べした感想
個人的に弾いていて楽しいのはギブソンです。
弦高をある程度下げられて、どのポジションでもストレスなく演奏ができることと、大きめの音量で鳴らしたときの奥行き感や解像度の高さが気持ち良いです。
エピフォンに関しては、コスパが良いってことはなく、価格相応な印象です。
私は普段USA製のPRSとかGibson Flying Vを弾いているので、それと比べてしまって、快適さを感じないという具合です。
ただし、セットネック構造でこの価格は、あまり無いので、すごいことではあります。
しっかり調整してあげれば、バンドのライブで使うくらいなら不満では無いと思います。
ギブソンを買うべき人はこんな人です。
- 10年かそれ以上じっくり使いたい
- もっと上達したい
- ニュアンスの練習などを、丁寧に練習したい
- Gibsonヘッドで所有欲を満たしたい
- 塗装や木材、ディティールなど見るだけでも楽しみたい
- 手放す時もある程度の価格で売りたい
- 現在10万円以下のギターを使っていて、不満がある
逆に、こんな人はエピフォンを買っても後悔しないと思います。
- ギター初心者の方
- 1本目か2本目のギター購入
- 主な演奏は自宅やレッスンでの練習
- ギター購入に10万円も予算が無い
- 20万円以上のギター購入は数年後の予定
- ラッカー塗装だとメンテナンスが心配
- 普段はフェンダー系を使っていて、セカンドギターとしてレスポールを探している
- ブランドやディティールはそれほど重要視していない
【まとめ】多くの人には60sがおすすめ
Epiphone Les Paul Standard 50sは、太めのネックの弾き心地、出力低めのピックアップによるトーンなど、玄人好みの仕様です。
最近このスペックが好みの人は、上級者が多いイメージなので、そうなるとGibsonじゃないと満足できないかもしれません。
予算が抑えめで、この辺が好きな渋めの人には、ほかブランドにも選択肢が無いので、これ一択かも。
Epiphone Les Paul Standard 50sはこんな人におすすめ
- 温かみのあるウォームなトーンが欲しい
- ブルースやクラシックロックが好き
- 丸みを帯びた少し太いネックにチャレンジしたい
- 伝統的なルックスのペグが好き
Epiphone Les Paul Standard 60sは、一般的なネックの太さによる演奏性と、バランスの良いピックアップのトーンで、多くの人が扱いやすく感じる仕様です。
低予算で王道レスポールが欲しい人にはぴったりです。
Epiphone Les Paul Standard 60sはこんな人におすすめ
- エレキギター初心者
- クリアでタイトな扱いやすい音が良い
- ロックやポップス、メロコア、メタル系などが好き
- ネックの太さは普通が安心
- 速弾きも練習したい