現役楽器屋店員のyosh(@yoshguitarblog)です。
Fender Aerodyne SpecialシリーズのStratocasterとTelecasterのレビューです。メキシコ製のモダンスペックPlayer Plusシリーズとも比較してみます。
Aerodyne Specialは
・テクニカルな演奏に対応できる仕様と品質
・リードやソロギター向きの芯のあるサウンド
・ルックスや演奏性のFender感は少ない
・バッキングメイン、デジタル機材との相性はPlayer Plusがおすすめ
Fender Aerodyne Specialモデルバリエーション
ギターはピックアップ配列の異なるストラトが2機種とテレキャス1機種の3機種のバリエーションが存在します。
Aerodyen Specila Stratocaster
Aerodyen Specila Stratocaster HSS
Aerodyen Specila Telecaster
メリット・デメリット
●メリット
①:日本製オリジナルのエアロダインデザイン
②:モダンな演奏性が享受できるスペック
③:弦交換が簡単でチューニングが安定するロック式ペグ
④:トーンをモダンに仕上げるBABICZ FCHブリッジ
⑤:専用開発されたピックアップによる独自サウンド
●デメリット
①:Fenderらしさが少ない
②:日本製バスウッドボディで約18万円は割高に感じる
メリット①:日本製オリジナルのエアロダインデザイン
Fender Japan時代から続くAerodyne(エアロダイン)シリーズより、2022年9月末に最新のAerodyne Special Seriesが登場。伝統的なフェンダーとは趣が異なるルックスが印象的です。
バインディングがあるアーチトップボディと、ヘッドとボディが統一されたマッチングヘッドの採用がルックス面での大きな特徴です。
今回のAerodyne Specialでは、新しいカラーとピックガードを廃したモダンなルックスに仕上がっています。生産完了となったMade in Japan Modernシリーズっぽさもありますね。
そしてエアロダインでテレキャスターが復活しました。
メリット②:モダンな演奏性が享受できるスペック
現代的な高い技術を要する演奏にも対応できるスペックを採用しています。
程よく大きめのミディアムジャンボサイズのフレットと、やや平気味の12インチ等ディアス指板により、弦高を下げやすく軽い力で押弦できるスペックです。
ネックシェイプも少し薄めのモダンCシェイプなので、テクニカルなプレイと相性の良いクラシックフォームに良く合います。
また従来のフェンダーよりもボディ厚が薄いので、少し軽量で取り回しの良い、演奏時の快適さも追求しています。
メリット③:弦交換が簡単でチューニングが安定するロック式ペグ
ペグにはチューニングが安定するロック式を採用。
工具不要で背面から締める構造なので、弦交換も楽に短時間で行えるのもメリットです。
メリット④:トーンをモダンに仕上げるBABICZ FCHブリッジ
フェンダーでは珍しい他社製ブリッジを採用。
BABICZ製はサドルに特徴があり、点で設置する従来のサドルと比較して、約50倍の設置面積を実現しています。
それにより弦の振動がブリッジを通じてボディにしっかり伝わるので、サウンドは輪郭と太さを兼ね備えたモダンなサウンドを実現しています。
メリット⑤:専用開発されたピックアップによる独自サウンド
搭載されているピックアップはAerodyne Specialのために新たに開発されたピックアップ。
メーカーホームページでは”新設計のヴィンテージヴォイシングがなされた”と記載されています。
芯があるサウンドという意味では言いたいことはわからなくもないですが、倍音が広がる感じは少なくタイトなので、サウンド全体を聞く限りではヴィンテージとは感じません。それが新設計のヴィンテージボイシングということでしょうか。
ゴリゴリなハードディストーションで速弾きするというよりは、クリーンからローゲインでテクニカルなサウンド、ichikaさんとかそっち系に良さそうです。フェンダーならではの”いなたさ”もあるので、アーバンなネオソウル系にもマッチします。
デメリット①:Fenderらしさが少ない
フェンダーは製品コンセプトが「ヴィンテージ」「ハイブリッド」「モダン」の3つのスタイルで、Aerodyne Specialは「モダン」スタイルにあたります。
なので当然、往年のフェンダーらしさはありません。新発売の直後に言うのも失礼ですが、TraditionalやHybridよりは売れないでしょうね。やっぱりフェンダーファンは往年のルックスじゃないと売れません。
フェンダーブランドが好きだけど、他人と被りたくない、という人にはいいかもしれません。10年もすれば誰も使っていないかもしれません笑。実際以前のモダンスタイルのMade in Japan Modernシリーズを愛用している人はSNSでもあまり見かけませんからね。。。
デメリット②:日本製バスウッドボディで約18万円は割高に感じる
昨今の原材料高、円安などでギターもご多分に漏れず、ほぼ全製品が値上がりしていると言っても過言ではありません。そのタイミングでの新製品は当然割高に感じてしまいます。
加えてバスウッドは低価格のフェンダーに採用されてきた歴史もあり、生理的に嫌うユーザー層も多いのでその悪印象に拍車をかけているかもしれません。
バスウッドはトップ材をメイプルと組み合わせることでsuhrやMusicmanなどハイエンド系にも採用されていたり、ゴリゴリに歪ませるIbanezでは受け入れられているボディ材ではあります。
同様にAerodyne Specialの音を聞いて、バスウッドだから音が悪いという風には聞こえません。
もちろんコレクションや所有欲の観点から、何の木材が使われているかを重視する考え方も理解できますし、そういう人にとってはデメリットに感じる点であると言えます。
旧機種Aerodyne IIとの違い比較
Aerodyne Special(新機種) | Aerodyne II(旧機種) | |
---|---|---|
生産国 | 日本 | 日本 |
ボディ | バスウッド | バスウッド |
ピックガード | なし | あり |
ネック | メイプル | メイプル |
ネックシェイプ | モダンCシェイプ | スリムCシェイプ |
指板 | ローズウッドもしくはメイプル | ローズウッド |
指板ラディアス | 12インチ(305mm) | 9.5インチ(241mm) |
ナット幅 | 1.69″ (43 mm) | 1.578″ (40 mm) |
ナット材 | 人工骨 | 牛骨 |
フレット | 22ミディアムジャンボ | 22ミディアムジャンボ |
ブリッジ | Babicz Z-Series FCH-2 Point Trem | 2-Point Synchronized Tremolo with Vintage-Style Stamped Steel Saddles |
ペグ | ロック式 | スタンダードダイキャスト |
ピックアップ | Aerodyne Special Single Coil | Standard Single Coil |
市場相場価格 | 181,500円 | 108,900円 |
旧エアロダインシリーズのMade in Japan Aerodyne IIからどこが変わったのか、スペックを比較してみます。
物価高騰も相まって、価格差は約7万円。
木材に相違はなく、目に見えるアップグレード箇所は、ロック式ペグとBabiczブリッジというハードウェア面、そしてピックアップ。
ルックス面ではカラーが一新されたことと、ピックガードが廃されたことで、見た目の好みは分かれそうですね。
演奏性の違いもあり、指板ラディアスが平らに、ナット幅も少し広がりました。ジャカジャカ弾くなら旧Aerodyne IIの方が向いていると言えますが、コードもメロディも丁寧に弾きたい人はAerodyne Specialが向いています。
メキシコ製Player Plusとの違い比較
Aerodyne Special Stratocaster | Player Plus Stratocaster | |
---|---|---|
生産国 | 日本 | メキシコ |
ボディ | バスウッド | アルダー |
ネック | メイプル | メイプル |
ネックシェイプ | モダンCシェイプ | モダンCシェイプ |
指板 | ローズウッドor メイプル | パーフェローor メイプル |
指板ラディアス | 12インチ(305mm) | 12インチ(305mm) |
ナット幅 | 1.69″ (43 mm) | 1.685″ (42.8mm) |
ナット材 | 人工骨 | 人工骨 |
フレット | 22ミディアムジャンボ | 22ミディアムジャンボ |
ブリッジ | Babicz Z-Series FCH-2 Point Trem | ブロックサドル2点支持トレモロ |
ペグ | ロック式 | ロック式 |
ピックアップ | Aerodyne Special Single Coil | Player Plus Noiseless |
ピックアップ配列 | 3SもしくはHSS | 3SもしくはHSS |
プッシュ-プル | なし | あり |
市場相場価格 | 181,500円 | 123,750円 |
現行のFenderのモダンスタイルとして、メキシコ製のPlayer Plus Stratocasterとスペックを交えて比較してみます。
①:木材の違い
そもそもその他のスペック自体も往年のスタイルではないのですが、どちらも往年のフェンダースペックから少し外れています。
Aerodyne Specialはメイプルネック+ローズウッド(orメイプル)指板ですが、ボディはバスウッド。
Player Plusはボディはアルダー、ネックはメイプルですが、指板はパーフェローです。
ボディはアルダーかアッシュ、指板はローズウッドしか認められないFender原理主義者の方はどちらもだめでしょう。個人的には何の木材が使われているかよりも、どんな音が出てくるかの方が大事です。サウンドについては後述。
木材について、もしあなたが「自分より詳しそうな人がダメって言っているから」と気になるなら、自分の耳とその人のどちらが信頼できるかが、買うべきか否かのポイントになると思います。
Player Plusのメイプル指板が唯一、往年のフェンダースペックではあります。
②:パーツの違い
両機種ともに弦交換がかんたんで、チューニングも安定するロック式ペグを採用しています。
最も大きな違いはブリッジです。
Player Plus もブロックサドルで2点支持トレモロなので、ブリッジミュートもやりやすく、アーミング操作も滑らかです。
Aerodyne SpecialはBabicz製。ブリッジミュート時の右手への感触はもっとフィットしやすい感覚です。
③:サウンドの違い
木材やピックアップによりサウンドの傾向にも違いが見られます。両機種で比較すると以下のようなイメージです。
Aerodyne Special・・・芯があるサウンド。アタックのダイナミクスが感じられるため、ソロギターやリード向きと言えます。ハイゲインディストーションというよりは、クリーンからオーバードライブに最適。
Player Puls・・・低から高音域まで比較的フラットなサウンド。バンドアンサンブルに馴染みやすくバッキング向きと言えます。エフェクターやデジタル機材との相性も良く、クリーンからディストーションまで対応します。
またサウンド切り替えのバリエーションについても若干異なります。Player Plusはプッシュ-プルスイッチにより、3シングルならフロントピックアップの追加、HSSならハムバッカーのコイルタップが可能です。Aerodyne Specialにこれら機能はありません。
④:演奏性の違い
指板ラディアスやフレットサイズ、ネックシェイプは同じ、ナット幅もほぼ同じで、演奏性に関わる部分のスペックに大差はありません。
カタログスペックに表記の無い部分、ネックやフレットの際の処理は日本製であるAerodyne Specialの方が丁寧な印象。
しかしPlayer Plusのネックもかなり丸められているので、劇的な違いは少ない感触で、両機種ともにモダン仕様のフェンダーの弾き心地。
どちらも工場出荷時からめちゃくちゃ弦高が低いというわけではないですが、ネック調整も含めてしっかり追い込めば速弾きもしやすいくらいには攻められます。
⑤:選び方
比べるべきポイントとしては3点。
①:サウンドの傾向
②:細部の仕上げまでこだわりたいか
③:ルックス
リードギターメインならAerodyne Special、リズムギターメインならPlayer Plus、というサウンド。
約6万円弱の価格差がありますので、現代的な音楽ジャンルで無難に幅広く使える汎用性とバランスの良さ、という面ではPlayer Plus の方がコスパが高いと言えます。
サウンドの違いは両機種で比べましたが、あらゆるギターと比べると方向性はそこそこ同じなので、ルックスで決めちゃっても良いかもしれません。後から改造で変えられる部分ではないので、個人的には大事な部分だと思います。
・細部まで丁寧な仕上げの日本製が好き
・フェンダーなのに唯一無二のルックスが気に入った
・モダンブルースやロック、フュージョンなどのリードギターを弾きたい
・ネオソウルやソロギターなどテクニカルなプレイを上達したい
・セットアップ調整を丁寧に追い込みたい
・バッキングでの使用がメイン
・シングルコイル用など宅録向きのサブギターを探している
・汎用性の高い便利なギターが欲しいが、モダン過ぎるギターは敬遠してきた
・ベーシストなどギタリスト以外のプレイヤーが、コスパの良いエレキギターを1本持っておきたい